【社会】都心の「限界集落」団地、地域崩壊に高まる危機感 1人暮らし高齢者急増の将来推計
【社会】都心の「限界集落」団地、地域崩壊に高まる危機感 1人暮らし高齢者急増の将来推計
隣人が孤独死「普通の状態に」
約3000世帯が入居する東京都新宿区の都営集合住宅「戸山ハイツ」。地下鉄の駅から徒歩10分ほどの好立地だが、高齢化率が5割を超える「限界集落」の団地で、集合住宅の部屋に1人で暮らす高齢者も多い。12日午後に取材に訪ねると、買い物や病院に出かける高齢者の姿が目についた。
「近頃見ないなあと思っていたら、亡くなっていた。死後3日くらいして親戚が見つけたと聞いた。そういう状態が普通になっている」
住民の男性(84)は4年前に1人暮らしの隣人が亡くなったときの状況をこう語り、危機感をにじませた。若い住民の少なさに不安を感じているという。ハイツは空室が1割近くに上るため、「新しい住民を入れればいいのに」と話した。
居場所づくりや社会参加を
現状に対する焦燥感からか、住民たちの結びつきは強い。50年以上住んでいる女性(76)は夫と2人暮らし。「配偶者が亡くなって1人で暮らす高齢者も多い。お茶会などで交流し、できるだけ声をかけるようにしている」。単身の住民が孤独を感じないように気を配っているという。
「1人で暮らしているが、近くに子供がいて時々見に来てくれるので不安はない」と話す住民の女性(82)もいた。
戸山ハイツのように地域の高齢化は全国的な問題だ。国立社会保障・人口問題研究所の藤井多希子・第2室長は「平成27年ごろから社会的孤立や孤独がテーマとなり、地域での居場所づくりや社会参加が大きな課題となっている」と話す。
老老介護「自分が面倒を見たい」
今回の推計では、未婚の割合が高い50歳前後の団塊ジュニア世代がクローズアップされた。「この人たちが高齢化して単独世帯化すれば、身寄りがなく、支援も受けづらい高齢者の増加につながる」(藤井氏)
高齢者が高齢者の世話をする「老老介護」など高齢の親子だけの生活も、これまで以上に懸念される課題となる。
戸山ハイツ近くのスーパーに向かうと、店舗前の広場で友人と談笑する住民男性(61)がいた。鬱病を患っているといい、同居する80代の母と年金などで生計を立てているそうだ。「母は(男性に)迷惑をかけたくないと言う。でも、自分がやるしかないし、面倒を見たいと思っている」と力強く語った。(山本玲、王美慧)
産経新聞 2024/4/12 20:53
https://www.sankei.com/article/20240412-LRKEBVXDXNIYFAJ65QSLRC3YSQ/