【社会】少なくとも、国会議員、官僚、自衛隊員は、LINEを使ってはいけない
【社会】少なくとも、国会議員、官僚、自衛隊員は、LINEを使ってはいけない
「LINEヤフーに自浄努力はもはや期待できない」
「筆者は安全性を考えてLINEを使っていない」
こう断言するのは、ジャーナリストの峯村健司氏だ。
LINEが再び「韓国経由での個人情報漏洩事故」を起こした。
昨年11月27日、LINEヤフーは、アプリの利用者情報(利用者の性別、年代、通話ページの表示回数、スタンプの購入履歴、企業の「公式アカウント」を通じた予約情報)など、約44万件が流出した可能性があると発表。さらにその後の調査で、漏洩の疑いがある件数が約51万9000件に達することを明らかにした。
この漏洩事故に対し、3月5日、総務省が行政指導を行なっていたが、3月28日には個人情報保護委員会が、個人情報保護法に違反しているとして是正勧告を出した。
峯村氏は、朝日新聞編集委員だった2021年3月、LINEが利用者に対する十分な説明をしないまま、中国の関連会社から個人情報を閲覧できる状態にしていたことを一面でスクープ。翌18日付朝刊では、利用者が投稿した画像・動画データが韓国内のサーバーに保管されていたことも続報し、LINEの杜撰な管理体制の実情を明らかにした。
この報道を受けた2021年3月23日の謝罪会見で、当時のLINEの親会社「Zホールディングス(ZHD)」出澤剛社長は、対策について次のように明言していた。
「韓国のサーバーに保管していた利用者のデータを日本に完全移転し、『完全国内化』をする」
こう述べていたにもかかわらず、再び事故を起こしたのだ。
政府関係者が「通信事業者として不誠実な対応」と吐露
3月5日、LINEヤフーの出澤剛社長が報道陣に発した一言に、峯村氏は耳を疑ったという。
「(韓国ネット大手)ネイバーとは親会社・子会社の関係性の中で、システム共有化などの協業を行ってきた」
3年前に国や利用者に誓っていた「完全国内化」は一体どこへ行ってしまったのか。
日本政府関係者は、峯村氏の取材にこう不信感をあらわにしたという。
「今回の問題が発覚するまで、LINEがネイバーのシステムを使っていたという重要な事実について、政府は一切報告を受けていなかった。前回の個人情報不備が発覚した際、今回のネイバーとのシステム共有化のことも検証して公表すべきことであり、通信事業者として不誠実な対応と言わざるをえない」
なぜLINE側はネイバーのシステムを使い続けるのか。
LINEの元技術者は、今回の峯村氏の取材にこう述べている。
「LINEはもはや、ネイバーの技術やシステムがなければ運用できないほど依存している。ネイバー側は重要な部分についてはブラックボックス化しており、日本側がアクセスできない仕組みになっている。LINEがネイバーを切り離すことは不可能といっていいだろう」
LINEの国内月間利用者数は、9600万人(2023年12月末時点)で、日本の全人口の70%以上をカバーしている。1日に1回以上利用するユーザーは86%(2023年6月末時点)で、SNSのなかでも、とくに利用率が高い。
しかも、LINEは単なる「コミュニケーションツール」にとどまらない。決済サービス「LINEペイ」や求人情報サイト「LINEバイト」など、日常生活に関わるあらゆるサービスを展開しているからだ。
さらには、政府や多くの地方自治体が、LINE公式アカウント上で、住民からの相談や納税などに対応し、「行政業務のDX(デジタル化推進)のツール」として、LINEを大々的に活用している。2021年時点で中央省庁18機関、全国の地方自治体の約65%が業務に利用し、機密情報や住民の個人情報なども扱われている。
2021年7月、16歳以上の約98%がLINEを利用している台湾では、台湾当局、政党、軍の要人など100人以上が、LINEを通じてハッキングされていたことが判明し、危機感が高まっている。台湾で安全保障を担う高官は、峯村氏の取材にこう述べたという。
「中国側によるサイバー攻撃の可能性が高い。多くの台湾人は、LINEは『日本製アプリ』だと信じて使っている。同社や日本政府には抜本的な対策を急いでほしい」
峯村氏はLINEアプリ利用者にこう警告する。
「ネイバーが中国に設立した『ネイバー中国』はネイバーのソフト開発や運用を担っており、LINEがネイバーと共通のシステムを使っている以上、中国側への情報流出のリスクがある」
「少なくとも、機密情報に触れうる国会議員、官僚、自衛隊員は、LINEを使ってはいけない」
峯村氏が「LINEアプリの危険性」を明らかにした「個人情報ダダ漏れ LINEは危なすぎる」は、「文藝春秋」2024年5月号(4月10日発売)、および「文藝春秋 電子版」(4月9日公開)に掲載されている。