【話題】2ちゃんねる、電車男、ハルヒ、初音ミク…この20年で日本は「一億総オタク社会」に
【話題】2ちゃんねる、電車男、ハルヒ、初音ミク…この20年で日本は「一億総オタク社会」に
一連のストーリーについては自作自演説もあり、マスコミがブームを煽るために仕掛けたやらせなのではないか、など様々な憶測も生んだ。しかし、それがフィクションであろうとノンフィクションであろうと、一人のオタク“電車男”とネット住民が起こした“奇跡”は爽やかな感動を呼び、当時、一般層にも普及しつつあったネット発の純愛物語として話題になった。
その書き込みを読みやすく整理した、いわゆる「まとめサイト」が作成され、それを単行本化した『電車男』が新潮社の編集者・郡司裕子氏の編集で、同年10月22日に発売。され、105万部に達するベストセラーになった。コミカライズ(あの「弱虫ペダル」の渡辺航が担当した作品もあった)、映画化、ドラマ化がなされ、まさに社会現象と呼べるブームを巻き起こした。
このヒットがその後のオタク文化に与えた影響は、功罪様々な観点から議論されている。少なくとも、オタクとはこういうもの、秋葉原とはこんな町、というイメージを一般人に植え付けた意味で、「電車男」は画期的であった。日陰の存在だったオタク文化が一般層に知られるようになり、その後の一般化、カジュアル化を急速に進めた作品だったといえる。
「電車男」がヒットする前の旅行ガイド「るるぶ」を開くと、秋葉原に関する記述はほとんどない。その後は誌面が割かれるようになり、メイドカフェまで掲載されるようになった。テレビやワイドショーでも秋葉原のカルチャーが盛んに取り上げられ、TVチャンピオンでは「アキバ王選手権」や「コスプレ王選手権」が開催され、お茶の間にも濃厚なオタクの生態が届けられた。
そして、2000年代には、ニコニコ動画などオタク文化を牽引するカルチャーが次々に登場した。2006年には、京都アニメーションによる高品質なアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」が話題になり、深夜アニメを視聴する一般人が増え始めた。2007年にVOCALOIDの「初音ミク」が発売されると、ニコニコ動画に作品をUPする文化が広まった。
2009年には、京アニの「けいおん!」の曲が純粋なアニメソングでは初めてオリコンで1位を獲得した。2004年の『電車男』のヒット後わずか数年の間に、現代のオタク文化の核になる作品が次々に登場し、流行となった。ギャル系の雑誌「egg」や「Popteen」でもオタク趣味をカミングアウトする女の子が現れ、シブヤ系、アキバ系などの分類も曖昧なものになっていく。
中川翔子のように、オタク趣味を公言するアイドルが出現したことも重要だろう。
書き出すときりがないのだが、「電車男」を境に、オタク文化の在り様は一変した。2024年現在、もはや誰しもが何らかのオタクであるし、推し活に興じている。町を歩けば、自分の推しキャラの缶バッジを付けた“痛バッグ”を持った女性と、何人もすれ違う。つつましやかで内向的だった過去のオタクを知っている立場からすれば、この変化にはただただ驚きである。
あれだけオタクをバッシングしたマスコミも、オタク文化を肯定的に扱うようになった。2010年代にはワイドショーや朝のニュースでも「ラブライブ!」のライブのレポートや、声優アイドルのインタビューを流すようになり、今ではほとんど否定的な報道は見られない。
反面、いにしえのオタクたちからは、こうした商業主義化を嘆く声も聞かれる。オタクをターゲットにした商品が乱発され、節操がなくなっているという指摘もある。「電車男」ヒット前のオタク文化を知る人が、当時を懐かしむことも少なくないようだ。今年50歳になる筋金入りのオタク、A氏はこう話す。
「以前のオタクは、周りから何を言われようとも趣味を貫いていました。部屋で黙々とアニメを見て作画監督ごとの違いを研究したりしていましたし、孤独でも好きな作品があれば十分に幸せでした。最近のオタク界隈を見ていると、美人のコスプレイヤーや声優のライブ、限定の商品が注目されて賑やかではあるけれど、作品をじっくり研究するタイプのオタクが減ったように思います」(抜粋)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b99de0790dd292504b5ea9157e66960f641c8ab5