【社会】アニメーターの半数が月225時間以上労働、しかし37%が月収20万円以下…調査で見えた業界の特色とは
【社会】アニメーターの半数が月225時間以上労働、しかし37%が月収20万円以下…調査で見えた業界の特色とは
一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟は27日、アニメ業界の働き方に関する調査報告を発表。同日公開した報告書には「月間平均労働時間は平均が219時間」「間単価は600円〜800円相当」といった詳細な数値が公表されていた。
【画像】【グラフ】年齢、職能、契約形態…多様な「手取り分析」で見える特徴(全7枚)
本調査はアニメ業界の働き方に対する一般的なイメージと現実との乖離を明示し、政策提言の資料へと活用することを視野に入れており、アンケートを通じて323件の業界従事者からの情報が寄せられた。
報告書によれば、アニメ業界の労働時間は長いという結果が初めに大きく掲示されていた。数値を見てみるとら全体の71.4%が1日8時間以上、30.4%が10時間以上働いていると回答したほか、月間平均労働時間としては平均が219時間、中央値では225時間、最大値では336時間という驚くべき数字が出た。これは日本全体の平均月間労働時間162.3時間と比べても非常に長いことを示している。
また、年齢が高くなっても労働時間が短くなる傾向はなく、50代でも8時間以上働いていると回答した割合が69%、10時間以上でも21%にものぼった。これは業界の慢性的な人材不足の問題が数値として浮き彫りになったと言えよう。
平均月収は低水準も男女格差は小さい
続いては収入面に目が向けられ、全体の37.7%がアニメ関係の仕事からの月収が20万円以下だと回答。アニメ業界以外の仕事に従事しているかの質問には77.6%が「現在は従事していない」「従事したことがない」と回答しており、業界全体の4人に1人程度は年収240万円以下で生活しているとの結果になった。
その一方で、男女間の収入差は日本全体の値よりも小さいことも多様な調査結果から明らかに。これはアニメ業界が“性別に関係のない実力主義”によるジョブ型雇用が一般的であることが起因しているといい、男女雇用機会均等の観点から見て比較的平等な業界であるとも言える。
「腕次第」プロアマの格差大きい
また、職業別での比較も行われており、仕上げとシナリオライターの収入が突出して低く60%以上が月収20万円未満、アニメーターや美術もそれぞれ43%、45%が月収20万円未満であることがわかった。しかしアニメーターについては、低水準の一方で年収1000万円を超えるとの回答も11%存在するほか、アニメーターのキャリアアップ先と言われるキャラクター/メカデザイン等では月収70万円以上、年収換算で840万円以上との回答が約15%にのぼっており、腕を磨けばしっかりと稼げると言うことも同時に示唆されている。
この傾向は製作サイドにも見られ、監督になると半数以上が月収50万円以上であると回答。しかし日本全体の傾向を見るとプロジェクトマネージャーの平均年収は891.5万円であるとの調査結果もあり、アニメ業界全体の賃金が低く抑えられているとの見方もされている。
調査ではまた、業界のハラスメント状況についても聞き取りを行っており、「ハラスメントを受けたことがある」と回答した人が65.8%、「ハラスメントを見聞きしたことがある」と回答した人が85.6%にのぼった。これらのハラスメントを報告したと回答した人は26.9%と低く、誰に相談すればいいのか、相談して解決できるとの安心感がないことが伺える。
一方で、アニメ業界での労働に対する熱意は高いことが確認された。「今後もアニメ業界で働きたいと思う」または「強くそう思う」と回答した人は71.8%にのぼり、「あまりそう思わない」または「そう思わない」と答えたのは5.5%のみだった。
・調査期間 :2023年12月4日〜2024年1月31日
・調査主体:一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)https://nafca.jp/
・調査対象:NAFCA会員のうちアニメ業界従事者
・有効回答数:323件
・調査方法:Webアンケートツールを用いたオンライン調査