【社会】「日本は痴漢大国」「女性は男性に浮気されても許す」世界からセックスツーリズム客が大挙押しかける理由

【社会】「日本は痴漢大国」「女性は男性に浮気されても許す」世界からセックスツーリズム客が大挙押しかける理由

このような偏ったイメージが海外で広まると、日本に対する誤ったイメージが広まってしまいますね。実際には女性が男性に浮気を許すというのは一般的な考え方ではないはずです。

増え続けるインバウンド客の中には、東京などにある性風俗産業店に行くことを目的にする人も多いという。なぜ、このような状況になっているのか。ジャーナリストの此花わかさんは「日本人が性に関する倫理観の緩さを自ら露呈するような動画を発信して、それに海外の人が反応している」という――。(前編/全2回)

■「パートナーがセックスショップへ行っても許すって本当?」

最近、海外へ取材に行くと日本人の性の在り方について質問をされることが増えた。数週間前、ハンガリーの地方都市に滞在時も、日本語を勉強しているという現地の女子大学生に聞かれた。

「日本の女性は、パートナーがセックスショップへ行っても“浮気”だと思わず、許すって本当?」

海外旅行の目的はさまざまだが、その中には「セックスツーリズム」というジャンルもある。近年、増え続けている訪日客においては、それを念頭に来る外国人も少なくない。なぜなら、東京はタイのパタヤをしのぐアジア一の“赤線地域”と言われ、人気を博しているからだ。

前出の女子大生はある動画を見せてくれた。日本人の男性ユーチューバーが若い日本人女性たちに街頭で「風俗は浮気だと思うか?」と質問すると、女性たちは「許す。風俗は日本の文化みたいなものだから」と答えていた。

こうした動画は他にもたくさんあり、その全てが世界に配信されている。その結果、「日本人女性は浮気されても許す」「セックスを買うことは日本では一般的だ」というステレオタイプが爆発的に広まっている。

数日前に外国人の友達に見せられたXの動画は、新宿・歌舞伎町の若い女性たちが投稿しているものだった。動画では10人の若い女性たちが英語でこう発信している。

「世界中の皆さん、こんにちは。私たちは日本の若い女の子たちです。私たちには知らないことがたくさんあります。そして多くの年上の人たちは私たちよりも多くのものをもっています。でも、私たちは多くのことに気づいています。なぜなら私たちは若いからです! なぜなら私たちは若いからです! そのひとつは、このままでは日本が滅びるということです。私たちは知っています。私たちは変えられます。私たちが日本を変えます。東京新宿歌舞伎町より」

■日本の性産業は2兆~6兆円市場とも言われるほど巨大

奇妙に感じたのは「私たちは若いから、若いから!」の部分だけ全員が一斉に大きく声をあわせて、「若さ」を強調しているところだった。この発信元は、「日本文化を世界に届け、笑顔と平和を届けることを使命」にしているという株式会社が運営している「キャバクラおじさん」のアカウントだ。だが案の定、この動画には外国から英語でネガティブなリプや引用が多数寄せられた。多いのは、日本人を嘲笑する内容だ。

「よし、そっちへ行く!」
「日本のHentaiって本当なんだね。日本の女性はアニメみたいに、子どもっぽい」
「自分よりもIQの低い人達がいる(笑)」
「日本はおかしくなっている。国際的に男性に妊娠を求める女性の広告を載せている」
「私の頭は空っぽです(笑)」

性産業を批判する投稿も多かった。

「どんな売春宿がこんなことをする? 売春宿の基準からしても哀れ。地元の経済が悪くて風俗嬢に手を差し伸べなければならないのか?(笑)」
「女性の若さとナイーブさを宣伝して、観光客を風俗店に呼び寄せようとしている」

これらの女性が歌舞伎町で働く女性たちかどうか正体は不明だが、この投稿が「性的サービス」を示唆していると捉えた外国人は多い。

日本の性産業は2兆~6兆円市場とも言われるほど巨大だ。性風俗産業で働く女性に対するセカンドキャリア支援事業をしている角間惇一郎さんの『風俗嬢の孤独』(光文社)によると、仮に約2兆円としてもその規模は化粧品市場や製菓市場と同規模で、出版社の倍以上の大きさだという。

そのような巨大なビジネスが日本人のステレオタイプを歪めている。この状態を野放しにするとどうなるのか。

■世界最大のポルノサイトで一大ジャンルとなった「hentai」

世界のポルノコンテンツの6割が日本製と聞くことがある。しかし、世界最大のポルノサイトのひとつである「Pornhub」(2007年にカナダ・モントリオールで開設された、プロとアマチュアのアダルト動画を配信するサイト)のレポートによると、「hentai」と「Japanese」は人気のジャンルのようだ。ちなみにhentaiは英語では一般的にエロアニメを指す。

2023 Year in Reviewによると、「最も検索されたワード」に「hentai」が第1位にランクイン。第2位のmilf(Mom I’d like to f*ck:直訳するとファックしたいママ、“熟女”に近いニュアンス)に続き、「Japanese」が第3位にランクインしている。実は、2022年の第1位もhentai、第2位はJapaneseであった。

同様に「最も人気のカテゴリー」でもJapaneseが2位、hentaiは9位にランクイン。レポートに掲載されている検索ワードの世界マップによると、Japaneseが常にトップに来るのは日本人を含めた東アジア人や東南アジア人が日本のAVを見ているのが理由のようである。

世界のポルノの6割が日本製というのは都市伝説かもしれないが、世界的に検索されるワードでJapaneseやhentaiがトップに来るのは確かなことで、日本のアダルトコンテンツの生産数は世界的にみても群を抜くほど多いといってもよいだろう。

■AVの痴漢モノが中国の犯罪グループを日本に呼び寄せた!

実際に、アジア諸国ではchikanという日本語が通じるほど、AVの痴漢ジャンルは人気だという。それだけではない。筆者が #痴漢 #風俗 とググっただけで、簡単にさまざまな痴漢専門をうたう風俗店を東京で見つけることができた。この「痴漢風俗店」は実際の痴漢事件を未然に防ぐためにできた、という声もあるが、信じる人はいないだろう。

筆者は8月にハンガリーで著名な心理学者、クリスティナ・ヘヴェシ博士のセミナーに参加したが、博士の研究ではポルノ中毒者はセックスを支配欲と混同するために性行為が暴力的になり、他人との親密な関係を結ぶのが難しくなる傾向が高くなるそうだ。ポルノでは登場するパフォーマーが性的モノ化されているから、それを何度も見ている人は生身の人間と親密な絆を結ぶのが難しくなっていくからだという。

また、アジア最大規模の依存症施設である榎本クリニック(東京・池袋など)で加害者臨床を専門とする精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)で、警察庁科学警察研究所の調査から「強姦や強制わいせつの容疑で逮捕された553人のうち33.5%が『AVを観て自分も同じことをしてみたかった』と回答」し、AVコンテンツは性犯罪に確実に影響があると述べている。

とにかく日本の「痴漢大国」は世界中で知れわたっているのは事実だ。現に、カナダやイギリス政府が日本へ渡航する人々にオフィシャルサイトで注意喚起を記しているほどである。

その上、昨年2023年6月8日にBBC News Japanが配信した記事「痴漢動画を売るサイトの裏を暴く……BBC独自調査日本と中国で」によると、東京在住の中国の犯罪グループが日本の女性を痴漢し、それをコンテンツ化しているという。BBCは中国の犯罪グループを追い、彼らが日本で本物の痴漢を撮影した動画を闇サイトで売っていることを突き止めた。

つまり、日本の性産業がChikanをコンテンツ化しネット上で“輸出”したことで、本物の痴漢犯罪グループを呼んでしまったというわけだ。

また、つい数日前の8月24日には、韓国の人気DJ、SODAさんが悲しい投稿をXにしていた。DJ SODAさんは昨年8月に日本の音楽フェスティバル「MUSIC CIRCUS’23」で痴漢被害に遭ったが、あろうことか、その事件を日本のAVメーカーがパロディ化し、SODAさんを二次被害に遭わせしまったのだ。「この事件をモチーフに日本のアダルトビデオメーカーがAVを制作したという話を聞いてとても悲しくなりました」とSODAさんは綴っている。

もちろん、有名人のスキャンダルをポルノコンテンツ化するのは日本だけではない。例えば、アメリカではビル・クリントンとモニカ・ルインスキーをパロディ化したポルノが出回った。しかし、SODAさんの場合は性犯罪だ。痴漢や強姦などの性犯罪をパロディ化するアダルトコンテンツは規制されるべきではないだろうか。(以下、後編に続く)

取材協力
中村ホールデン梨華
炎上から学ぶ社会をめざすAD-LAMP代表
広告コンサルタントを経てブリストル大学修士社会起業論課程在学中。SNSにて「広告炎上チェッカー」(@Enjocheck)として活動する。広告倫理に関する講演やワークショップを行い100以上の広告を分析。炎上広告の市民による代案を展示する「市民広告 Towards Change展」を英国で開催。

———-

此花 わか(このはな・わか)
ジャーナリスト
社会・文化を取材し、日本語と英語で発信するジャーナリスト。ライアン・ゴズリングやヒュー・ジャックマンなどのハリウッドスターから、宇宙飛行士や芥川賞作家まで様々なジャンルの人々へのインタビューも手掛ける。

———-

※写真はイメージです – 写真=iStock.com/aluxum

(出典 news.nicovideo.jp)

続きを読む

続きを見る