【新潮】ウクライナ「越境攻撃」にプーチン大統領が“不気味な沈黙”を貫くワケ 専門家は「ロシア軍の罠に引っかかった」可能性を指摘
【新潮】ウクライナ「越境攻撃」にプーチン大統領が“不気味な沈黙”を貫くワケ 専門家は「ロシア軍の罠に引っかかった」可能性を指摘
ロシア国防省はウクライナ軍の規模は数百人と推測していたが、とてもそんな規模ではなかった。経済誌Forbesの日本語電子版は8月9日、「ウクライナ軍、越境攻撃に精鋭の空挺旅団も投入 『本格侵攻』の様相強まる」との記事を配信した。
記事は情報源を明らかにしていないが、ウクライナ寄りの記述が目立つ。そして越境攻撃を行った旅団名を明記した。
《陸軍の第22独立機械化旅団と第88独立機械化旅団、そして空中強襲軍(空挺軍)の第80空中強襲旅団というウクライナ正規軍の少なくとも3個旅団が実行しており、砲兵部隊、ドローンチーム、防空部隊がきわめて重要な支援任務にあたっている。各旅団は最大2000人規模だ》
さらに記事の最後では、ウクライナ軍がロシア軍に一矢報いたことを積極的に評価した。
《ウクライナ軍の指揮官たちは、攻撃のペースと規模でロシア軍の指揮官たちを慌てふためかせた。これは称賛に値する。CDS(編集部註:防衛戦略センター)は北方軍集団司令部の意思決定には「顕著な遅れ」がみられるとし、それはウクライナ軍による今回の作戦の「おそらく本質と考えられるものを見誤った」ためだと断じている》
ウクライナ軍の越境攻撃に、ロシア軍は反撃するに違いない。ただちに東部戦線から部隊を派遣し、クルスク州内で大きな戦闘が起きる──多くの専門家や報道関係者は、ロシア軍の迅速な作戦行動を予想したが、実際は全く違っていた。
■ロシア軍の“人海戦術”
同じForbesは8月29日、「ウクライナの越境作戦が裏目に 東部でロ軍の攻勢加速、自軍は兵力不足に拍車」との記事を配信した。冒頭からロシア軍が東部戦線で猛攻を続けていることが伝えられている。
《ロシア軍は28日、ウクライナ東部ドネツク州ノボフロジウカ市を制圧したもようだ。ウクライナ東部で1年近く続けている攻勢の主目標のひとつであるポクロウシク市まで、わずか8kmほどに迫っている》
なぜ東部戦線でロシア軍はウクライナ軍を追い詰めているのか。担当記者が言う。
「Forbesが原因の一つと指摘しているのが、ウクライナ軍における弾薬の枯渇です。アメリカで一部の共和党議員がウクライナ支援に反対したことで、追加援助が延期されてしまったのです。もちろんウクライナ軍も多数のロシア軍を撃破しています。しかしロシア軍は、どれだけの犠牲を払ってでも前に進むという“人海戦術”を採用しているため、徐々にではありますが、じりじりとウクライナ軍を押し込んでいるというわけです」
越境攻撃に投入された3個旅団は、NATO(北大西洋条約機構)の供与した最新装備を持つ精鋭部隊だ。これこそ東部戦線に投入すべきだったのではないか──という疑問は、当初からウクライナ軍の内部にもあったようだ。
■ウクライナの戦術的敗北
(省略)
一部報道によると、ウクライナの精鋭部隊がロシアの国境線へ侵入した際、守るロシア兵は新兵ばかりで、おまけにスコップしか持っていなかったという。
「ロシア軍は越境攻撃を仕掛けてきたウクライナ軍に対し、まともに戦おうとしていません。これは実のところ、合理的な判断ではないでしょうか。放っておいても、いつかウクライナ軍の越境攻撃は兵站の関係で進軍が止まるのです。ならば相手にはせず、東部戦線に戦力を集中させたほうが得策だと考えている可能性があります。たとえクルスク州全土を失ったとしても、ロシアにとっては広大な領土のごく一部に過ぎません」(同・軍事ジャーナリスト)
■狡猾なロシア軍
ロシア軍にとってクルスク州の敗北は痛くも痒くもない──。
「ロシア軍がクルスク州でウクライナ軍の進撃を許しているのは、実は狡猾な“罠”なのではないでしょうか。ロシア軍は東部戦線に兵力を集中し、重要拠点を一気に落とすことを最優先にしているようです」(同・軍事ジャーナリスト)
もしウクライナ軍が東部戦線で敗北し、次々と重要拠点を失うような事態になれば、さらに事態は紛糾するかもしれない。
何しろゼレンスキー大統領は軍の一部が反対するのも強引に退け、越境攻撃に全てを賭けたと報じられている。その判断ミスが問われるかもしれない。
9/4(水) 11:10配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0d596cb298e6c113f756c8a16d9f68e34120dda
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