清掃業者によって世界初のマイクロコンピュータ「Q1」が発見される!
清掃業者によって世界初のマイクロコンピュータ「Q1」が発見される!
清掃業者によって世界初のマイクロコンピュータ「Q1」が発見される | ニコニコニュース
現代普及しているデスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、スマホなどをさかのぼると、数十年も昔の「原型」にたどり着きます。
そんな原型の1つであるコンピュータ「Q1」は、諸説あるものの、1972年12月に販売された「世界初のマイクロコンピュータ」と呼ばれています。
最近、そんな幻のマイクロコンピュータが、清掃業者によってロンドンのある家屋から発見されました。
発見された「Q1」2台は、イギリスのキングストン大学(Kingston University)が2月に開いた特別展示会にて公開されました。
目次
- 世界初のマイクロコンピュータ「Q1」
- 清掃業者が希少なコンピュータ「Q1」をロンドンの家屋で発見する
世界初のマイクロコンピュータ「Q1」
1960年代や1970年代、当時コンピュータといえば、研究室や企業が所有する巨大な装置でした。
「メインフレーム」「ミニコンピュータ」という名称のそれらコンピュータは、一室を占有したり、壁一面にそびえ立っていたりするような代物だったのです。
当然、それら巨大なコンピュータは非常に高価であり、個人が所有することはありませんでした。
しかしこの時期には、マイクロプロセッサ(演算・制御などの機能を1つの半導体チップに集積したもの)も開発され、大きな変化が生じることになりました。
CPUとしてマイクロプロセッサを使用したコンピュータである「マイクロコンピュータ」が登場することになったのです。
このマイクロコンピュータは、当時の巨大なコンピュータと比べるとスペックがはるかに劣るものの、物理的にコンパクトでした。
ちなみに、世界初のマイクロプロセッサは、「Intel 4004」であり、日本のビジコン社とアメリカのインテルの共同開発により、1971年に出荷されています。
そして1972年には、同じく初期のマイクロプロセッサの1つである「Intel 8008」が開発製造されました。
このIntel 8008をCPUに使ったマイクロコンピュータ「Altair8800」は、1974年12月に販売されており、一般消費者向けに販売された初期の個人用コンピュータとして多くの人に知られるようになりました。
では、Altair8800が世界初のマイクロコンピュータだったのでしょうか。
そうではないようです。
アメリカの「Q1 Corporation」社は、マイクロプロセッサ「Intel 8008」がリリースされてからわずか8カ月後の1972年12月に、Intel 8008を搭載したマイクロコンピュータ「Q1」を販売したのです。
当時のマイクロコンピュータには無名のものも数多く存在し、様々な主張が飛び交っています。
そのため諸説あるものの、このQ1は、「世界初のマイクロコンピュータ」と呼ばれることがあります。
清掃業者が希少なコンピュータ「Q1」をロンドンの家屋で発見する
1972年に販売されたマイクロコンピュータ「Q1」は、スクリーンとキーボードが装備されたスタンドアローンのコンピュータであり、そのスタイルは、現代のPCとさほど変わりません。
メモリはわずか16KB、最大クロックは800kHzであり、そのパフォーマンスは現代のPCと比べるとはるかに小さいものでした。
そしてこれを開発したQ1 Corporationは1974年に買収されており、Q1の存在を知っている人はあまり多くありません。
特にイギリスにはアメリカから数台しか輸入されておらず、イギリスにおいてQ1は「無名なマシン」の1つでした。
だからこそ、2024年2月14~17日に一般公開されたキングストン大学の展示会「Creating the Everything Device」で、最古のマイクロコンピュータQ1が2台展示されたことは、その存在を知る数少ない人々にとって衝撃的でした。
しかも、この貴重なマシンは、清掃業者によって発見されたというから驚きです。
ロンドンの清掃・廃棄物処理の会社「ジャストクリア」のスタッフが、ロンドンのある家屋を片付けていたところ、積み上げられた古い箱の中から、2台のQ1を発見したのです。
今回の展示会に関わるコンピュータの専門家ポール・ニーブ氏は、これら初期のマイクロコンピュータを開発したQ1 Corporationや他の会社の名を挙げ、「それらが無ければPCもMacも、Appleも、Androidスマートフォンも存在しなかったでしょう」と述べています。
確かに、その後のコンピュータ技術の進展は凄まじいものでした。
特にコンピュータの小型化によって、その進展は私たちの目に明らかになってきました。
1980年代には、「個人で使用するコンピュータ」という意味が込められた「パーソナルコンピュータ(PC)」の名称が一般化し、オフィスや個人で広く用いられるようになりました。
そして1989年には、持ち運び可能なサイズのパソコン「ノートパソコン」が販売されるようになっています。
さらに、PC並みの機能を持たせた携帯電話である「スマートフォン」は、iPhone(2007年発売)やAndroid端末(2008年発売)によって世界的に広く普及していきました。
現代では、さらにその先を進んでおり、コンピュータは私たちの生活に欠かせないものとなっています。
だからこそ、今のPCの原型となった「世界初のマイクロコンピュータ」は、私たちにとって興味深いものです。
そして今回の発見のように、まだ世界のどこかには、希少なマイクロコンピュータが眠ったままになっているかもしれません。
World’s first microcomputer goes on display alongside range of other vintage computers in public exhibition at Kingston University
https://www.kingston.ac.uk/news/article/2920/13-feb-2024-worlds-first-microcomputer-goes-on-display–alongside-range-of-other-vintage-computers-in-public-exhibition/
Q1
https://www.thebyteattic.com/p/q1.html
Priceless barn find: World’s first microcomputers discovered by cleaners
https://newatlas.com/computers/first-microcomputer-found/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。
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