【社会】「うずらの卵だけ悪者は違う」 窒息事故で給食使用控えの動き、生産者が減産危惧「食べ方の指導も大事」
【社会】「うずらの卵だけ悪者は違う」 窒息事故で給食使用控えの動き、生産者が減産危惧「食べ方の指導も大事」
福岡県みやま市の小学校で1年生の男子児童が給食の「うずらの卵」をのどに詰まらせて死亡する痛ましい事故が起きた。文科省が注意喚起の通知を出したほか、市教育委員会はうずらの卵を当面使わない考えを示し、各地でも「使用控え」の気配がみられる。
東海地方のうずら農家は、亡くなった子を悼みながらも「うずらの卵だけが悪者にされるのは違うのではないか」と苦渋の表情を浮かべる。飲食業界に打撃を与えた新型コロナ禍では、卵を捨てなければいけなかったといい、今回も「減産」が頭によぎる。
●給食で使われなければ生産者には「大打撃」
小学生が給食のうずらの卵をのどに詰まらせた死亡事故は、2015年に大阪でも発生した。
うずらの卵を生産する「浜名湖ファーム」(静岡県湖西市)の近藤哲治社長は弁護士ドットコムニュースの取材に「当時はほとんど報じられていなかったように記憶していて、今回はニュースの量の多さに驚いています」と話す。
浜名湖ファームでは、9万羽のうずらを飼育し、卵のほとんどを国内の水煮加工工場に出荷している。ただ、湖西市の小中学校の給食で出されるうずらの卵は「100%、うちのもの」と話すほど、学校給食も無視できない供給先だ。
近藤社長は、市内の学校で働く栄養士から「うずらの卵を使うのを止めるといった話が出ている」と聞いたという。
「まだ末端の生産現場にまで影響は出ていません。しかし、販売には影響が出ているようです。生き物なので、すぐに卵の生産を止めることはできないが、おそらく1カ月後には減産(卵の処分)などもありえるのではないか」
近藤社長によると、全国でうずらの生産者は30軒もないという。
2020年の新型コロナ禍では、3割の減産があったという。それに加えてウクライナ侵攻の影響で、餌代も高騰している。ほとんどの畜産家と同じく、うずら生産者も苦しい状態にあるという。
近藤社長は学校給食で卵が使われなくなると、各地の生産者に影響があるだろうと指摘する。
「もちろん食べるときに注意は必要ですよ。低学年であればさらに気をつけなければいけないでしょう。ただ、単にうずらの卵が悪いという方向には進んでほしくない。食べ方を指導することも大事ではないかなと。給食でうずらが出なくなれば、生産農家、加工工場、流通の人にとっては大打撃になります」