【北朝鮮軍人インタビュー】「軍需工場が全滅した」大規模水害の現地報告
【北朝鮮軍人インタビュー】「軍需工場が全滅した」大規模水害の現地報告
【北朝鮮軍人インタビュー】「軍需工場が全滅した」大規模水害の現地報告 (2024年8月5日掲載) – livedoor 【北朝鮮軍人インタビュー】「軍需工場が全滅した」大規模水害の現地報告 (2024年8月5日掲載) livedoor (出典:livedoor) |
影響は出ているのかな?
先月末に北朝鮮の鴨緑江流域を襲った大雨、大洪水で、甚大な被害が発生している。韓国メディアは少なくとも1100人が死亡し、4100戸が浸水したと報道。金正恩総書記はこれを「嘘だ」としているが、いずれにせよ被害の全貌はまだ明らかになっていない。
金正恩氏が視察に訪れた鴨緑江下流の平安北道(ピョンアンブクト)がクローズアップされがちだが、中流の慈江道(チャガンド)、上流の両江道(リャンガンド)の被害も極めて深刻で、鴨緑江沿いにとどまらず、その支流が流れる内陸地域の被害も甚大であるようだ。
被災地はまだ水が引いておらず、平屋建ての住宅の半分程度の高さまで浸水しており、土地の低いところにある家は、屋根まで水に浸かっている。また、橋や道路が流失し、どこに道路があったのかわからないほどで、電柱も多くが流され、電力供給は完全に断たれた状態となっている。
注目すべきは、軍需工場への電力供給までが断たれ、稼働が中断したことだ。
デイリーNKは、被災地に派遣された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍人Aさん(階級不明)にインタビューを行い、北朝鮮の国営メディアが触れない、被害の実相を探った。Aさんは、軍需工場の密集地帯であり、北朝鮮国民も立ち入りが制限されている慈江道に派遣されており、なかなか知ることのできない地域の被害状況を詳細に話してくれた。
ー現在、派遣されている地域は?
A:慈江道の(鴨緑江に面している)慈城(チャソン)郡、満浦(マンポ)市、(内陸の)江界(カンゲ)市まで行ったり来たりしつつ作業を行っている。
ー被害状況は?
A:鴨緑江沿いの家屋はことごとく浸水したと見ていいだろう。住民はすべて避難している。一般住宅、農家、工場もすべて水に浸かり、道路、堤防、橋もほとんどが壊れた。電気や水道の供給など考えられない。慈江道は大型軍需工場が多く集まっている地域だ。(民家など)他はともかく、軍需工場は電気を優先供給され、24時間稼働をしていたが、今回の水害でこれらも生産を停止した。
ー慈江道には、将子江(チャンジャガン)工作機械工場、2.8機械総合工場、江界トラクター工場、江界精密機械総合工場など軍需工場が集まっているが、すべてが稼働を停止したのか?
A:そうだ。満浦市の軍需工場では、地下につながる坑道まで水に浸かってしまったところが多い。軍需品生産に必要な機械や資材もすべて濡れてしまった。今回の(朝鮮労働党中央委員会)政治局会議で、慈江道委員会の責任書記(トップ)が解任されたのは、人民の命を救えなかったというのが理由ではなく、実際は軍需工場まで浸水被害を受けた責任を問われたのだ。ここにいる軍人は皆知っていることだ。
軍需工場の浸水は極めて深刻な状態だ。ある工場では、人が坑道に入れないほど水に浸かってしまった。爆薬の原料は濡れたからといって乾かすわけにもいかず、すべて捨てるしかない。上層部は、民家が浸水したことより、軍需工場が坑道まで水に浸かったことをずっと深刻に捉えている。
ー被災地での作業内容は?
まずは孤立した住民を安全な場所に避難させる作業を行った。(川越しに)渡したロープを腰にくくりつけ、増水した川を渡ったのだが、非常に危険だった。救助に当たっている軍人が流されそうになる状況が何度も発生し、別の部隊では救助作業中に複数の死者を出している。
今は、浸水した家から水を汲み出し、泥と残骸を掻き出す作業を行っている。道路を復旧させ、移動ができるように臨時の橋をかけている。
ー人的被害は?遺体収集は行った?
生まれて初めて遺体を見た。とても辛く苦しかった。現場では毎日遺体を見る。中には嘔吐する軍人もいた。救助に来たのに毎日遺体収集を行っている。それほど死んだ人が多いということだ。死者、行方不明者の統計は、道・市・郡の非常災害対応組が調査して、毎日中央に報告していと聞いている。
ー現場で最も辛いことは?
装備と人員の不足だ。人手がとにかく足りない。多くの軍人が被災地に投入されたが、浸水地域があまりにも広く、人手が足りない。装備も足りず、ロープ1本に身を預けて水の中に入ることも少なくない。体を水に浸けての作業なのですぐに疲れてしまい、倒れてしまう軍人も多い。ただ、食事の内容はマシだ。戦時物資をすべて投入しているおかげで、普段よりは質が良いのだと思う。
ー被害復旧にかかる期間は?
少なくとも数カ月はかかると見られる。1〜2カ月では難しいだろう。