好き嫌い分かれる「パクチー」を給食に導入…、子どもたちに受け入れられるか
好き嫌い分かれる「パクチー」を給食に導入…、子どもたちに受け入れられるか
学校給食での提供を始めた。市学校給食センターで4種類のレシピを考案、いずれも「香りは残しつつマイルドに仕上げた」
という自信作で、今年から市内の幼稚園と小中学校で提供が始まった。せっけんやカメムシにも例えられるその独特な香りで
好き嫌いが分かれるパクチーを学校給食に使うという全国的にも珍しい取り組み。果たして産地の子供たちに受け入れられ、
将来的な「万人受け」が期待できるのか…。
・食べやすくておいしい
「初めて食べたけどおいしかった」。5月14日、市立南吉井小学校の給食時間。3年のあるクラスでは、
提供されたパクチー料理を食べた児童が口々に感想を話していた。
この日提供されたのはジャガイモやウインナーなどを炒めてカレー風味にし、小さく刻んだ地元産のパクチーを加えた
「東温ポテト」。教室ではほぼ全児童が提供された量を完食、担任教諭が「おかわりしたい人」と呼び掛けると十数人の行列ができた。
渡部映実さん(8)は「パクチーの香りもしたけど食べやすかった」と話した。
市内13の幼稚園と小中学校分の給食を作る市学校給食センターによると、「東温ポテト」については食べられなかったという
子供の報告もなく、全体の食べ残し量も普段の別メニューより少なかったという。
・進む産地化と食育
東温市では平成29年から一部農家がパクチーの栽培を始め、令和元年には県が「パクチー産地づくり事業部」を立ち上げて支援を開始。
通年出荷に向けた栽培方法の確立や生産者の育成などを進め、令和5年は東温市を中心に17の農家が年間計2・5トンを出荷している。
パクチーの産地化が進むなか、東温市教委では地元産の食材で生産から消費までの流れや食事の大切さを学ぶ「食育」に取り入れようと、
給食での使用を決定。学校給食センターで今年1月からレシピの研究に着手し「東温ポテト」のほか、「東温チャプチェ」
「スパイシーチキン」「東温うまからチキン」の計4メニューを開発、提供を始めた。
どのメニューも、試作を重ねるなどしたといい、給食センターの担当者は
「パクチーの特徴を残しながら、食べやすくおいしい料理に仕上がった」と自信をみせる。
・地産地消、生産者育成の期待込め
パクチーは10年ほど前、タイなど東南アジアの料理がブームとなったことをきっかけに各地で生産が本格化した。
ただ、先行して産地化に取り組んだ地域でも、パクチーが持つ独特の香りへの抵抗感からか、給食に使用する例はほとんどない。
例えば農林水産省の令和2年度の統計で、全国1位の153トンを生産する福岡県。
その一大産地を抱える久留米市でもパクチーを給食に使っていない。市教委の担当者は「好き嫌いが分かれる食品ということが大きい。
衛生上、提供前に加熱する必要があるが食材本来の風味を残す調理も難しい」と話す。
全国2位の静岡県の産地、袋井市教委の担当者も「好き嫌いが分かれて使いづらい。これまであえて使おうという話も出なかった」という。
平成29年に一部学校で給食に取り入れた岡山市は数年で献立から姿を消した。
ただ、市教委は「提供をやめたのは市全体の給食に使う量が確保できなかったためで、児童からは好評だった」と振り返る。
東温市学校給食センターの今井恵都子栄養教諭は「子供の頃から親しむことで、自然に食べられるようになるし、地元の食材を知り、
食べることは重要な学びにつながる。今後も定期的にパクチーメニューを提供していきたい」と話す。
県の担当者は給食での提供について「地産地消の促進や将来の生産者育成、産地としての知名度向上につながる。
これからも続けてほしい」と期待を込めた。(前川康二)
2024/5/22 11:00
https://www.sankei.com/article/20240522-3CN2XZZ73ZNRNKJHNUJ5ZGDBEY/