【社会】「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”

【社会】「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”

現場を知らない。把握が出来てないのかな。

 政府広報が公式X(Twitter)に投稿した「平成・令和の学校給食」の写真が、現在提供されている学校給食よりも豪勢なのではないかとして、Xユーザーから疑問の声が集まりました。ねとらぼ編集部は農林水産省政府広報の担当者、学校給食に詳しい識者に取材し、投稿に批判が集まった背景を追いました。

【画像】批判集めた政府広報「令和の学校給食」の写真

●「今の給食こんな豪華じゃない」

 物議をかもしたのは、政府広報公式Xが4月17日に投稿したポスト。明治から令和にかけての学校給食の変遷を写真で伝える内容でした。

 明治・大正時代は料理が2~3品だったのが、昭和以降は品数やバリエーションが増えていくようすがわかる投稿。「平成・令和」のものとして紹介された給食は、全部で6品のメニューが写っていました。

 しかし、Xユーザーからは「今の給食こんな豪華じゃない」「これを現代の給食と紹介するのは無理ある」「こんな給食最近は出てないよ」「現場を知らなすぎる」と違和感を覚える声が続出。実際に近年提供されているとする学校給食の写真をアップし、政府広報の写真と比較する投稿も相次ぎました。

 この写真は2020年(令和2年)に農林水産省の広報誌「aff(あふ)」に掲載された、日本の給食の歴史についての特集を、政府広報が引用する形で掲載したものでした。

 広報誌を管理する農林水産省広報室編集班の担当者はねとらぼ編集部の取材に対し、写真の給食はあくまで「モデル例」だとし、写真が撮られた時期については「掲載当時どこまでチェックしたかは不明」と説明。SNS上で疑問が相次いでいることについては「(写真を見た人が)今の給食と比べると『豪華ではない』という実感を持たれたのは事実なのだと思います」としました。

 一方、政府広報担当者への取材によると、投稿は1月24日の「学校給食記念日」に合わせて掲載予定だったものの、令和6年能登半島地震の発生を受け4月17日に掲載を延期する結果になったといいます。

 平成・令和の給食の写真に対する批判については「そうした声があるのは承知している」としつつ、「投稿は『学校給食の歴史』をご紹介する目的で行った。学校給食の内容は自治体によってさまざまであると認識しており、そうした個別の学校給食を具体的に紹介するために投稿したものではない」と見解を示しました。

●識者「現在の学校給食の状況を反映したものとはいえない」

 投稿はなぜ批判を集めることになったのでしょうか。著書『給食費未納~子どもの貧困と食生活格差~』(光文社新書)、『子どもの貧困と食格差』(大月書店)で知られ、子どもの貧困に関する研究を行う跡見学園女子大学マネジメント学部の鳫(がん)咲子教授は、政府広報の投稿の問題点を次のように指摘します。

政府広報公式Xは4年前の2020年の農林水産省の広報誌を引用していますが、2021年以降に食料価格が大幅に高騰した影響で、学校給食は予算内での食材の調達が難しくなっています。政府広報が投稿した『平成・令和の学校給食』の写真は、現在の学校給食の状況を反映したものとは言えないでしょう」

 帝国データバンクの調査によると、2023年1月~10月に発生した給食事業者の倒産件数は17件と、2年連続で増加。2023年9月には給食事業を運営するホーユー(広島市)が破産し、全国への給食供給がストップしたことも問題となりました。

 一般的な商品であれば、原材料価格の上昇を販売価格に転嫁することも可能です。しかし「学校給食費の1食当たりの価格は、全国平均で小学校256円、中学校300円(2021年度)ですが、年間では5万円前後と相当の出費であり、値上げに子育て家庭の理解を得るのは難しい」鳫氏は説明。その結果として、価格を維持するために学校給食の質量を安くなるよう調整する動きや、民間委託の場合は給食事業者の経営が追い込まれる事例が相次いでいるのです。

「多くの市区町村は、保護者負担軽減のために自主財源や政府の交付金を活用していますが、それでも食材費の高騰分を賄えるわけではなく、以前に比べ献立が寂しくなっているのが現状です」(鳫氏)

●学校給食の問題点は他にも……国に求められることは

 子どもの健康には欠かせない学校給食が直面する危機。学校給食を巡る課題は、提供量の減少や値段の張る肉、魚といった献立などが減る以外にもあると、鳫氏は指摘します。

 現在、給食費の支払いが困難な家庭には、給食費が未納とならないよう個別の家庭に経済的支援を行う就学援助制度があります。しかし、制度の周知不足や、制度を利用すると子どもが差別されると感じることなどから、就学援助を受ける小中学生の割合は11年連続で減少しており、必要な家庭に支援が届かない課題が生じているといいます。

 また、食育の重要性を重視する観点から、給食無償化に踏み切る市区町村も増えている一方で、中学生への主食・おかず・牛乳のそろった完全給食実施率(分母は生徒数)が85%以下(2021年度)に留まる地域があり、給食を巡る自治体間の格差も顕著になっています。

 鳫氏はこうした格差は「見過ごせない」ものだとし、「政府は児童手当のような現金給付だけでなく、子どもに直接届けられる給食サービスの給付(無償化)に予算を配分し、文部科学省農林水産省は食育の観点からも、学校給食の質の向上、自治体間格差の解消に努めるべきではないでしょうか」と問題提起をしています。

政府広報の「学校給食」投稿に批判、背景は(あんころもち/ PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

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