大手ゲームメーカー7社で分かれた明暗。『桃鉄』コナミは過去最高、『FF』頼みのスクエニetc.
大手ゲームメーカー7社で分かれた明暗。『桃鉄』コナミは過去最高、『FF』頼みのスクエニetc.
(出典 4649.club)
1月末~2月中旬にかけて、大手ゲーム会社の第3四半期決算が続々と発表されています。任天堂の売上高2倍になった部門とは? さすがはコーエーと絶賛の声が上がった理由とは? 明暗分かれたそれぞれの第3四半期決算の内容をざっくり見ていきましょう。
◆任天堂 ハード7年目「未知の領域」突入も好調
任天堂の2024年3月期第3四半期は、経常利益が前年同期比17.6%増の5673億円(2023年4月~12月)。上方修正と増配も発表され、その安定した好調ぶりが伺えます。今期は7年目に突入したNintendo Switch本体の販売台数が、1374万台(前年同期比7.8%減)と健闘したことが貢献しています。
注目すべきは売上高が前年同期比93.4%増の752億円となった「モバイル・IP関連収入等」。これは主に2023年4月公開の映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の興行収入が累計13億4900万ドル超と大当たりしたため。
すでに『ゼルダの伝説』の映画化(公開時期未定)も発表され、期待が高まっています。今後はディズニーのように豊富なキャラクターを活かして、映像ビジネスに注力していくのでは? という見方も出ています。2025年オープンのテーマパーク「ユニバーサル・エピック・ユニバース」(アメリカ・フロリダ州)内にも「スーパー・ニンテンドー・ワールド」エリアが建設中です。
◆カプコン 手堅く看板シリーズで稼ぎ増益
カプコンの2024年3月期 第3四半期決算は経常利益47%増の494億円と数字を伸ばしました(2023年4月~12月)。『ストリートファイター6』(2023年6月発売)が全世界で好調だったほか、『モンスターハンター』の完全新作『モンスターハンターワイルズ』(2025年発売予定)の発表にあわせて、過去作のリピート販売が増加したことが理由として挙げられています。
年末商戦では目立ったタイトルはありませんでしたが、手堅く看板シリーズで稼いだ格好。今年『モンスターハンター』は早くも20周年を迎えます。新たなヒットシリーズは生まれるでしょうか。
◆バンダイナムコホールディングス 新作オンラインRPGが絶不調!?
バンダイナムコホールディングスの2024年3月期 第3四半期決算は、売上高は過去最高だったものの、デジタル事業(ゲーム部門)で今期投入した「新作オンラインゲーム等に関わる評価損」などにより、経常利益が前年同期比23%減の896億円(2023年4月~12月)。通期(2023年4月~2024年3月)の経常利益も下方修正しています。
長年開発してきた完全新作オンラインRPG『ブループロトコル』(PC版2023年6月、PS5・XboxX/S版2023年12月)の不振が響いているのでは? との憶測がSNSで多くなされています。
ただ、ガシャポンやカードなどトイホビー事業は引き続き好調。映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(2024年1月公開)が、『ガンダム』シリーズ最高興行収入を塗り替えるなど、明るいニュースも出てきています。
◆スクウェア・エニックス 国民的RPGブランド頼みも……
スクウェア・エニックスの第3四半期決算は、売上高前年同期比0.8%増、経常利益は19.5%減(2023年4月~12月)と減益。累計期間内に『ファイナルファンタジーXVI』(2023年6月)、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(2023年12月)を発売しましたが、わずかな増収にとどまりました。
スマホタイトルでは『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』(2023年6月)、『ファイナルファンタジーVII EVER CRISIS』(2023年9月)などのサービスが始まったものの、「既存タイトルの弱含み等」で減収となっています。
昨年は『シノアリス』『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 魂の絆』を筆頭にスマホゲームのサービス終了が相次いだスクウェア・エニックス。2024年は『ファイナルファンタジーVII リバース』がどこまで盛り上がるか注目です。
◆コナミグループ もはや年末の定番『桃鉄』が100万本超え
コナミの第3四半期決算は、経常利益が前年同期比60.3%増と好調(2023年4月~12月)。売上高、最終利益ともに過去最高を更新しています。35周年を迎えた国民的ボードゲームの最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』(2023年11月)が累計出荷100万本を突破。一時休眠していた『桃鉄』シリーズが、年末商戦の定番として鮮やかに蘇りました。ほかにアミューズメント事業、ゲーミング&システム事業、スポーツ事業も前年を上回っています。
◆セガサミーホールディングス パチスロは好調もゲームが苦戦!?
セガサミーは、パチスロ中心の遊技機部門は好調ながら、セガがメインのエンタテイメントコンテンツ事業が「新作タイトルの一部軟調により」前年同期比52.5%の減益。
年末商戦タイトルは『ソニックスーパースターズ』(2023年10月)、『龍が如く7外伝 名を消した男』(2023年11月)、『ペルソナ5 タクティカ』(2023年11月)などがありましたが、いずれも大ヒットとはいかず。ただ、2024年1月発売のハワイを舞台にした『龍が如く8』は、シリーズ最速で全世界累計販売100万本を突破したとのこと。セガの巻き返しが始まるでしょうか?
パッケージ分野では既存タイトルのリピート販売が中心だったコーエーテクモ。目立った新作タイトルがなく、スマホゲームの販売開始に伴う販売手数料、広告宣伝費、外注費の増加により、営業利益は203億1600万円(前年同期比11.7%減)でした。
しかし特筆すべきは、純利益が80%増の242億8300万円となったこと。これは営業外で有価証券売却益を計上したためで、投資の名人として知られている襟川恵子会長の手腕を称える声がSNSでも数多く上がっていました。本業のゲームでは『仁王』スタッフによるオープンワールドアクションRPG『Rise of the Ronin』(2024年3月発売)に、海外から熱い視線が集まっています。
以上、大手ゲーム会社の第3四半期決算を駆け足で見てきました。そのほか、ソニーはゲーム&ネットワークサービス分野について「主に販売台数減少によるハードウェアの減収により11月時点の見通しを下回る見込み」と発表。PS5に減速感が見られます。
DeNAやGREEなどソーシャルゲームを柱とする企業は苦戦、セガのゲームセンター事業を買収し、「GiGO(ギーゴ)」というブランド名で展開しているGENDA(ジェンダ)は好調など、アフターコロナにあってゲーム界にも新たな動きが出てきています。
<文/卯月 鮎>
【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も