【社会】最も成績がよい群の睡眠時間は「8~9時間」…小中学生4万人調査で判明”ぐうの音も出ない”生活習慣

【社会】最も成績がよい群の睡眠時間は「8~9時間」…小中学生4万人調査で判明”ぐうの音も出ない”生活習慣

やっぱり子どもたちにとっても睡眠って大事ですよね。成績にも影響するなんて驚きです。

スマホ時代になって夜型の子どもがますます増えている。「脳トレ」で知られる東北大学教授の川島隆太さんは「それは、子どもの“脳育”の観点からは最悪の傾向だ。小中学生4万人の調査・分析をしたところ、早寝早起きの睡眠習慣と認知機能の相関関係は考えていた以上だった」という──。(第1回/全3回)

※本稿は、川島隆太『脳科学研究がつきとめた「頭のよい子」を育てるすごい習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■成績上位グループの約85%の子どもは「夜10時」に寝ている

十分な睡眠が脳にとって重要であることは、すでに皆さんご存じのことでしょう。私たちの研究チームは、それを確かめるべく、仙台市の小中学校の子どもたちを対象に、睡眠習慣と成績について調査を行いました。

結果、当初の予想通り、成績上位グループの約85%の子どもたちは、「午後10時前」もしくは「午後10時から11時まで」に就寝していることが確認されました。

午前0時以降に就寝している子も中にはいましたが、それはごく少数。

対して、成績下位グループの約70%が「午後10時前」もしくは「午後10時から11時まで」の就寝で、午前0時以降に就寝する子どもが約10%いました。

■早寝早起きでしっかり眠る子どもは認知能力が高い

さらに、私たちは全国951人の小学生を対象に、「早寝」「早起き」「睡眠時間が長い」といった睡眠習慣と、様々な認知機能テストの成績との関係を調べました。

その結果は、次のようなものでした。

早起きの子ども:思考力、空間的情報処理能力、図形処理能力が高い
早寝の子ども:言語、空間的情報処理能力が高い
睡眠時間が長い子ども:記憶力、作業力、空間的情報処理能力、図形処理能力が高い

ここから、「早寝、早起き、睡眠時間が長い子どもは、様々な認知機能が高くなって頭がよくなる」ということがわかります。

■睡眠時間が短いと、あらゆる面で能力が低くなる

文部科学省が全国の小中学生を対象に行っている睡眠習慣の調査においても、同様の傾向を裏づける結果が出ています。

睡眠時間が6時間未満の子どもと6~8時間の子どもとを比較した場合、睡眠時間の短い子どもは学力だけでなく、50メートル走や持久走などでも成績が大きく劣ることがわかりました。

つまり、「睡眠時間が短い子どもは、頭脳や身体能力などあらゆる面で能力が低くなる」。これは、動かし難い事実なのです。

なぜこうしたことが起こるのか、脳の働きに着目して解説してみましょう。

■[理由1]睡眠不足で脳のエネルギーが枯渇

第1の理由として、「睡眠不足によって脳のエネルギー不足が起こる」ことが挙げられます。

私たちの体は約37兆個の細胞で構成されていて、その細胞の1つひとつには、「ミトコンドリア」という器官が存在しています。ミトコンドリアは各細胞の中に数百から数千という数で存在し、人間の体重の約10%を占めるといわれています。

この無数のミトコンドリアが発電所のように働くことで、私たちの体を動かしたり、内臓を働かせたり、脳細胞を活性化させたりといった、あらゆる生命活動のためのエネルギーを生み出しているのです。

ミトコンドリアは、睡眠が不足すると、その発電所としての働きを低下させてしまうことがわかっています。

皆さんも、睡眠不足の翌日に「体がだるくて動きたくない……」となった経験があるのではないでしょうか。あのような状態になるのは、ミトコンドリアのエネルギー産生不足が原因です。脳細胞がエネルギー不足に陥れば、当然ながら、頭が十分に働かなくなります。脳機能が低下すれば精神状態にも悪影響が表れ、感情が不安定になったり、集中力も低下しますから、学習どころではありません。

脳の発達段階にある子どもが慢性的な睡眠不足になれば、あらゆる認知能力が低くなることは、避けようがないでしょう。

■[理由2]睡眠不足で脳の構造が変質する

理由の2つ目は、さらに深刻です。なぜなら、脳の構造自体を変質させてしまうからです。

睡眠不足の子どもは、学習や記憶と関わる重要な部位である脳の「海馬」が十分に発達しなくなることが、私たちの研究によって確認されています。

2008年(平成20年)から4年間、仙台市の子どもを対象に、脳のMRI画像で睡眠時間に関する調査を実施、分析したところ、海馬の発達と睡眠時間は正相関することがわかりました。

つまり、睡眠時間が長い子どもの海馬はよく育ち、睡眠時間が短い子どもの海馬は十分に育っていない、ということです。学校の成績にも、それは如実に表れていました。

■最も成績がよい子どもの睡眠時間は「8~9時間」

さらに、2014年(平成26年)に仙台市の子どもたちの睡眠時間と学力(国語と算数)の関係を調査したところ、図表1のグラフのような結果となりました。

国語、算数ともに、最も成績がよい子どもの睡眠時間は「8~9時間」であることがわかります。そこから睡眠時間が短くなるにつれて、成績も下降していきます。

面白いのは、睡眠時間が9時間以上になっても成績は下がっていくということ。寝過ぎるのもよくない……ともいわれますが、私は「生活が不規則で、睡眠時間が長いわりには良質な睡眠がとれていないため、すっきりと目覚められずにダラダラ寝ている」可能性が高いと考えています。

やはり、「早寝、早起き」も脳発達に欠かせない重要な要素なのです。

■[理由3]記憶を定着させるためには「レム睡眠」が必須

理由の3つ目は、「脳内に記憶を定着させるには『レム睡眠』が必須」ということです。

私たちが眠っているとき、深い眠りと浅い眠りを何度も繰り返していることは、皆さんもご存じでしょう。

学習したことを定着させるために非常に重要なのが、この睡眠リズムです。

人間の睡眠は、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」が約90分周期で変動しています。このレム睡眠のときに、私たちの脳内では日中に学習したことや経験したことを情報処理し、必要なものを選り分けて記憶に定着させる作業が行われています。

8時間の睡眠時間があれば、記憶定着のためのレム睡眠が6~7回得られるといわれています。ところが、睡眠時間が6時間になると、レム睡眠の回数は4回程度になってしまいます。

つまり、記憶を定着させるための回数が減ってしまうということです。

■睡眠時間が短い子どもの成績が低いのは「必然」

習ったことの復習を毎日6~7回行っている子どもと、4回行っている子どもの成績を比べたとき、当然ながら後者はかなり不利になるでしょう。

睡眠時間が短い子どもの成績が低くなるのは、必然といえるのです。

私が所属している東北大学で、医学部に合格した学生たちに「大学受験のときには何時に就寝していましたか」と尋ねると、8割方が「夜11時前」と答えます。

同様に、民間のある調査では、東京大学合格者のうち「受験期も夜11時前に就寝していた」という学生が約75%もいたといいます。

■夜遅くまで勉強を頑張ると成績が落ちる

子どもが夜遅くまで勉強していると、多くの親御さんは「がんばっているから邪魔しないでおこう」と考えがちです。

しかし、このとき子どもの海馬の発達はストップし、記憶定着のチャンスも失うことになっているわけです。

そして、試験本番のときには脳内エネルギーが枯渇(こかつ)して、力を発揮できない可能性が高くなります。

■成績を上げたいなら「早寝」「早起き」「最低8時間の睡眠」

成績のよい子どもは、「早寝」「早起き」「最低8時間の睡眠」──。

そう心に刻んで、中高生のお子さんであっても夜10時にはテレビを消して就寝することを習慣づけていきましょう。スマホやパソコンも「夜10時以降は触らない」といった約束を取り決めておくことをおすすめします。

一方、小さな子どもの場合は、就寝することを渋ることもあるでしょう。

それでも、家全体を消灯して、親御さんも布団へ入ってしまえば、あきらめて隣に入ってきてくれます。昼間元気に遊んでいれば、絵本を2〜3冊読み聞かせているうちに、ぐっすり眠ってくれることでしょう。

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川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授
1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。

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(出典 news.nicovideo.jp)

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