【社会】なぜ日本だけ世襲議員が多いのか…政治家に悪用されブラックボックス化する「政治団体」の実態とは
【社会】なぜ日本だけ世襲議員が多いのか…政治家に悪用されブラックボックス化する「政治団体」の実態とは
〈鎌倉武士の起源は“脱税集団”だった。源頼朝が「脱税集団を結束させるため」に使った手法とは〉から続く
国家は税によってつくられ、税がつくられると必ず発生する脱税。「大化の改新」「源平合戦」「織田信長の延暦寺焼き討ち」そして現代に至るまで、歴史の大きなターニングポイントの裏には必ずといっていいほど脱税が絡んでいた。思わぬ事実に目からウロコ。脱税の視点で日本史を読み解く『脱税の日本史』(宝島社)より一部抜粋して紹介します(全3回の2回目/最初から読む)
日本に世襲政治家が多い理由
政治家の格好の逃税アイテムとなっている「政治団体」というシステムは、政治家の相続税逃れのスキームともなっています。
政治団体に個人が寄付をする場合、贈与税は非課税となっています。そして政治資金規正法で、個人は政治団体に年間2000万円までは寄付できるようになっているのです。
だから、親が毎年2000万円を子供の政治団体に寄付していけば、相続税をまったく払わずに、自分の資産を譲り渡すことができるのです。
さらに、政治団体から政治団体に寄付をする場合も非課税であり、しかもこの場合は、寄付金の上限額はありません。
世襲議員の場合、親も本人も別個の政治団体をつくっています。
だから親の政治団体から子供の政治団体に寄付をするという形を採れば、何億円であろうと何十億円であろうと無税で相続することができるのです。
もし親が急に死亡した場合でも、親の政治団体から子供の政治団体にお金を移せば、相続税はゼロで済むのです。
このように、親の政治家がため込んだお金は無税で子の政治家に渡るシステムがあるので、世襲政治家が増殖することになったのです。
少なくとも、この相続税の優遇制度は廃止しないと、世襲政治家の増殖は止められないし、日本の低迷も止められないのです。
世襲制は人類の永遠の課題
日本は先進国の中では異常に世襲議員が多くなっています。テレビ朝日のデータによると日本の衆議院の23%は世襲議員です。アメリカ、イギリスは7%程度、ドイツは1%以下です。しかも日本の場合、過去20年で首相9人のうち6人が世襲議員なのです。
こんな国は先進国にはどこにも見当たりません。
世襲制というのは、人類の永遠の課題とも言えるものです。
日本でも聖徳太子の時代から「門閥によらない人材登用」を掲げた政治改革が幾たびも行われてきました。しかし、時間が経てば改革は骨抜きにされ、世襲制が復活してくるのです。
あの明治維新も、テーマの一つが世襲制の廃止でした。
江戸時代のような、生まれた家柄で身分や職業が決まってしまう社会を廃し、家柄や身分に関係なく自分の能力に合った仕事や地位につける社会をつくる、というのが明治維新の目的でもあったのです。
しかし、それらの改革はいずれも時間が経てば骨抜きにされ、世襲制がゾンビのように復活してきます。そして今の日本も、「政治団体」という法律の抜け穴がつくられ、政治家が世襲制になりつつあるのです。
〈「一番うれしいのは納税できること」日本最大の企業・トヨタが5年間法人税ゼロだった“巧妙なカラクリ”〉へ続く
(大村 大次郎/Webオリジナル(外部転載))