【社会】日本中の漁港が釣り禁止に…「海釣りGO」で漁業者と釣り人をWin-Winに
【社会】日本中の漁港が釣り禁止に…「海釣りGO」で漁業者と釣り人をWin-Winに
メジナやカサゴ、さまざまな魚と出会うことができるのが、漁港での釣りの魅力。しかし、そこにはある問題がある。田子漁港の真野創さんは「漁業者の船が通ってペラに釣り糸が巻いちゃってリールと竿が海の方に持ってかれて。“弁償してくれないか?”と言われ、苦渋の決断で釣り禁止にした」と明かす。
近年、コロナ禍のレジャーとして釣りの人気が上昇。釣り人の増加に伴い、各地の漁港では漁業関係者とのトラブルが多発するなど、問題が発生している。静岡県西伊豆町(にしいずちょう)の田子漁港でも、コロナ禍以降釣り禁止の措置をとっていた。そして全国でも、同様に釣りを禁止にする漁港が増えている。
■漁港での釣りの問題点
自身も釣り人である株式会社ウミゴーの國村大喜さんは、漁港での釣りの問題点について「漁港は漁業者さんたちが組合費を払ってみんなで維持している場所。そこに対して、これまで釣り人はただ乗りをしていた。ただ乗りして汚して帰る人がいるんだったら誰も許してくれないよねっていうところが日本中の漁港が釣り禁止になった根本原因だ」と指摘。
そこで國村さんは立ち上げたサービスが「海釣りGO」。漁港を釣り場として整備し、利用者は専用アプリを使って釣り場を予約してから釣りをする。その際、利用料を徴収し、その一部を漁港に分配することで、漁港側のメリットも生み出す。
■田子漁港は全国で初めて「海釣りGO」を導入
田子漁港は去年7月、町や漁協のサポートのもと、全国で初めて「海釣りGO」を導入し、港を釣り場として開放した。真野さんは開放当時について「釣り禁止が皆さんに周知できたところに新たに始めて、また釣り人が来て漁業者の邪魔をする、元の木阿弥じゃないかって話も多々あった。最初の2~3ヶ月は(漁業者の)理解が大変だった」と振り返った。
■「海釣りGO」とは
料金は大人1時間300円。駐車場が1時間100円。巡視員が定期的に見回りや清掃をするので、利用者は安心して釣りができる。サービス開始当初から話題を呼び、利用者は現在までに4700人を超えている。田子漁港の関係者や地元住民の評判も上々だ。
真野さんは、田子漁港を釣り場として開放後について、「自分も作業している時、今まで声をかけられなかった雰囲気だったけど、お互いが声を掛け合えるような、そんな世界になったような気がする。 釣り好きのリピーターの方が写真を送ってくれて、外に貼りだした。地元の方も“こんなのが釣れるんだ”とか言って喜んでいる」と語る。
「海釣りGO」の導入で、漁港側も利用者側も納得した形で釣り場として開放することに成功した田子漁港。そして新たに8月から、静岡県西伊豆町の仁科漁港でも、「海釣りGO」を導入することが決まった。
■静岡県西伊豆町の仁科漁港でも導入
仁科漁港の山田雅志さんは「となりの田子が海釣りGOを始めて少し利益が出た。飲食店のお客さんが増えた。そういうこと聞いたので、うちもやってみたいなって」と話す。
釣り以外にも漁協直営の食堂や市場・露天風呂など、家族連れで楽しめる魅力が沢山あるという仁科漁港。山田さんは、過疎が進む地域の活性化にも期待している。
「宿泊施設・飲食店は、港がにぎやかになれば、そういうところもにぎやかになると思うから、過疎化とか人口が少なくなっているところに人が入ってきてくれればいい」
開かれた漁港で「持続可能な『いい釣り』を」。國村さんは海釣りGOを全国に展開していきたいという。
「かつて日本で、魚が山のように取れて、景気が良かった時代の漁港は本当ににぎわっていた。そういう世界に一歩でも近づけたいと私たちは思っている。たぶんそれは地域課題に悩んでいる日本の沿岸部の漁村、町の方々もきっと同じ思い。なので一つとっかかりは釣り場開放、そのきっかけを起点にして、漁業体験や水産業の加工、地元の方が気付いていない良いところをピックアップして、その費用を地元に還元させる大きなループを作っていきたい」
(『ABEMA Morning』より)