【自衛隊】特定秘密「漏えい」の定義知らなかった…海上自衛隊の認識不足 一方で「秘密保護の仕組みが問題」との声も
【自衛隊】特定秘密「漏えい」の定義知らなかった…海上自衛隊の認識不足 一方で「秘密保護の仕組みが問題」との声も
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◆安全保障に関する特定秘密の漏えい・扱いの瑕疵は58件
防衛省によると、安全保障に関わる機密性の高い「特定秘密」の漏えいや取り扱いの瑕疵(かし)は合わせて58件あった。このうち特定秘密を扱う資格のない自衛隊員を秘密を知り得る環境に置いた事案は35件。防衛省は「組織的な要因」があったと結論づけた。10年前に施行した特定秘密保護法が、現場で正確に理解されないまま運用されていたことも判明。秘密保護の徹底を目的とした同法の限界も露呈した。
海上自衛隊トップの酒井良海幕長は12日の記者会見で、「漏えいの定義をしっかり部隊に認識させることができず、秘密保全や教育など、組織全体として問題があった」と釈明した。
◆無資格者を「知り得る状態」に置くことも漏えいに該当
特定秘密保護法では、漏えいは誰かに漏らすだけでなく、映像や会話も含めて特定秘密を無資格者に知り得る状態に置くことも該当する。海上幕僚監部は、知り得る状態に置くことが漏えいに当たると認識しておらず、戦闘指揮所(CIC)などでの保全措置が不十分だったと認定した。
具体的には、護衛艦の艦内にあるCICなどの区画には、レーダーやソナーによって得た周辺海域の外国船などの航行情報や、自艦の状態が表示されるモニターが複数設置されている。これらの情報には特定秘密が多く含まれるが、同法に基づき、秘密を扱うための身辺調査を伴う「適性評価」を受けた隊員と受けていない隊員が混在していた。
◆「10年間放置されたのが問題」
防衛省幹部は取材に、「省内で漏えいの定義を組織全体に共有していれば、海自でも対策が取れた。10年間それが放置されたのが問題だ」と話す。同省は今後、再発防止策として、CICの勤務者と立ち入る可能性がある全隊員に適性評価を受けさせるとした。
特定秘密の指定対象は防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野。2023年末時点で各府省庁が751件を特定秘密に指定し、防衛省分が6割を占める。適性評価の保持者計13万5000人の内訳は、外務省や警察庁など26機関にまたがるが、漏えい違反が確認されたのは防衛省・自衛隊だけだ。
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「業務に支障を来すような秘密保護の仕組みがそもそも問題だ。秘密保護を優先する法律の建前と、運用現場のちぐはぐさが明らかになった」と指摘。不必要な情報まで指定されている恐れもあり、「指定の妥当性を国会などがチェックするべきだ」と強調する。(川田篤志)
東京新聞 2024年7月13日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/339809