【東京新聞】 国民生活を崩壊させた第2次世界大戦時の軍事費膨張 岸田政権の防衛費大幅増は戦時財政をなぞっていないか
【東京新聞】 国民生活を崩壊させた第2次世界大戦時の軍事費膨張 岸田政権の防衛費大幅増は戦時財政をなぞっていないか
1 @仮面ウニダー ★ :2024/07/06(土) 06:50:44.67 ID:EOjB7Hw5
◆国の行く末を案じる戦没者遺族
「いまだに父の遺骨は見つからない。遺族のもとに返すのが戦争を始めた国の責任ではないか」。
硫黄島など各地で収容された遺骨が新たに納められる中、千葉県から参列した上田美毎(よしかつ)さん(82)がつぶやいた。
父が出征したのは1941年の夏。生まれる数日前だった。満州(現中国東北部)を経て、1944年に西部ニューギニア(現インドネシア)
で息絶えていたと戦後分かった。「現地は食糧もなく、飢えや病で悲惨な状況だったはず。あんな戦争は二度と繰り返してはいけない」
上田さんは、戦後「平和国家」として歩んできた日本の行く末に不安を感じる。岸田文雄首相は安保政策を転換し、
敵基地攻撃能力の保有に踏み切った。「敵の基地をたたけば、戦争を始めたとみなされるのではないか。
なぜ話し合いで解決しようとしないのか」。
ー中略ー
◆「打ち出のこづち」だった軍事費特別会計
「日本の安全を守るのに本当に必要な規模や装備の議論が乏しいまま、額ありきと言うしかない。
公共事業のための建設国債を充てるのも拡大解釈だ」。中央大の関野満夫教授(財政学)は疑問を投げかける。
念頭にあるのが国債の乱発や増税で国力以上に軍事費を膨らませ、破局へと突き進んだかつての戦時財政だ。
1937年に日中戦争が始まると、政府は臨時軍事費特別会計を設置。終戦まで決算はなく、詳しい議会報告もいらない
「打ち出の小づち」だ。一般会計と合わせた1944年度の歳出額は、開戦時の18倍となる約860億円に急拡大した。
一般会計も臨軍会計への繰り入れなど軍事関係の歳出が約7割に上り、財政全体で戦争遂行を支えた。
◆戦費調達に好都合だった国債や借入金
だが、財源の7割は公債や借入金だった。借金への依存度は5割程度の米国や英国に比べ、一段と高かった。
関野教授は「国民所得の水準が低いため、増税による税収より国債発行の方が手っ取り早く戦費を調達するのに好都合だった」
と指摘する。
国民は国債購入の原資となる貯蓄を半ば強制された。戦後、その預貯金も超インフレで実質価値を喪失。財政危機を乗り切るため、
戦時中以上の重い税負担も課された。「軍事費膨張が国民生活を崩壊させた事実を記憶しておくべきだ」
◆地域の緊張を高める「軍拡の罠」
軍拡に伴う兵器開発や国家の同盟関係は、地域の緊張感を一層高める。いわゆる「軍拡の罠」だ。
研究者は、戦前と現代の類似性を指摘する。
明治大の山田朗教授(日本近現代史)は航続距離の長い零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の完成が、真珠湾攻撃という新戦略の採用に
つながったとみる。岸田政権が増額する防衛費で長射程ミサイルの取得や整備を強化する動きを戦前と重ね合わせ、
「専守防衛という従来の枠を超え、抑止力以上の存在になりかねない」と懸念を示す。
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=338230&pid=1511135
1940年に結ばれた日独伊三国同盟は日中戦争の打開や勢力圏の拡張を狙ったものの、米英を刺激し太平洋戦争に突入する
引き金となった。
「軍拡が軍事同盟と結び付くと、結果的に相手を追い込んだり結束させたりし、軍拡の連鎖に火を付けてしまう」と説く。
◆「軍縮カードを持ち、知恵を絞って」
米中が対立し分断が深まる世界で、加速する日米の一体化に危うさを感じるのもそのためだ。
山田教授は「戦前の『国体護持』のように、日米同盟の維持が絶対的な目的となっている。米国の戦略に振り回され、
防衛力のあり方に国民の声が及んでいない」と指摘し、こう警鐘を鳴らす。
「軍縮のカードを持ち、近隣諸国との付き合い方に知恵を絞らなければ、緊張を高めるばかりだ」
来年で戦後80年。軍拡がたどった歴史の教訓は今も生きているのか。千鳥ケ淵に眠る37万柱もの遺骨が静かに問いかけている。
(近藤統義)
2024年7月6日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/338230