【社会】いまの若者は「結婚できない中年男性」と同じ不幸を抱えている…若者の婚姻数が激減している本当の理由

【社会】いまの若者は「結婚できない中年男性」と同じ不幸を抱えている…若者の婚姻数が激減している本当の理由

若者の結婚願望が低い理由には、経済的な不安やキャリア重視、恋愛経験の少なさなど様々な要因が考えられるのかもしれませんね。今の社会状況を考えると、結婚が悩みどころになる若者も多いのかもしれません。

■世代、男女、結婚の有無…最も幸福度が低いのは?

しあわせとは、その感じ方も基準も人それぞれで、あくまで主観的なものです。よって、標準的・絶対的な指標としての幸福度は存在しません。ですが、マクロ的な調査をするとおおまかな傾向があることも確かです。

もっとも幸福度が低い属性はどれか?

男性なのか、女性なのか。年代はどれなのか? はたまた、未婚と既婚で変わるのか。

男女で見れば、幸福度は男性より女性のほうが高い傾向があり、年代別には若いほど幸福度が高く、中年期に最低に下がり、老年期に入るとまた上昇するという「Uの字」型になる特徴があります。

そして、もうひとつ幸福度で顕著な違いがあるのは、配偶関係です。つまり、未婚か既婚かによっても明らかに幸福度が異なります。

私は、独身研究の一環として、未婚者と既婚者とで幸福度の違い、さらには男女、年代別での幸福度の違いについて2014年から継続調査してきました。その結果から申し上げれば、未婚者より既婚者のほうが幸福度は高く、男性より女性のほうが幸福度は高く、40代~50代の中年層より若者のほうが幸福度が高いという傾向は常に一定でした。

■40代~50代未婚男性の不幸度が突出している

2020年、首都圏の未既婚男女約1万5000人を対象とした調査の結果が以下の通りです(図表1)。幸福度については5段階評価とし、「とてもしあわせ」「まあまあしあわせ」を幸福、「やや不幸」「とても不幸」を不幸と分けて、「どちらともいえない」は別としています。

男女ともに、既婚者に比べて未婚者の幸福度は低く、特に男性の40代~50代では既婚者の半分以下しか未婚者は幸福を感じていないということになります。同時に、40代~50代未婚男性の不幸度の高さも突出しており、40代で36%、50代で34%が不幸であると感じています。40代以上の未婚男性は、幸福を感じる人数より不幸を感じる人数のほうが上回ってもいます。

男性ほどではないにしろ、それは女性でも同様で、40代未婚女性の24%、50代未婚女性の21%が不幸だと感じています。既婚男女の不幸度が10%台にとどまっているのとでは大きな違いがあります。

一方で、既婚女性の幸福度も高さも群を抜いています。もっとも低い50代でも62%が幸福であると答え、20代では8割近い77%が幸福です。

つまり、この結果をまとめると、もっとも不幸な属性は「40代~50代の未婚男性である」ということになるわけです。

■「結婚したらしあわせになれるはず」と思い込んでいる

このように、同じ性別・年代でも未婚か既婚かで幸福度は大きく変わりますが、民間の幸福度調査でも性別年代別の区分まではあっても、配偶関係で区分をした調査は、私の知るところではほぼありません。

しかし、前述の結果通り、未婚と既婚とでこれだけ大きな差があるということは無視できないポイントだと思います。ましてや、生涯未婚人口が大幅に増え続けている現代においてはなおさらです。

とはいえ、これだけで短絡的に「結婚したほうが幸福度は高いのだ」ととらえることはできません。

人間が陥りやすい思考の罠に「フォーカシング・イリュージョン」というものがあります。これは、ノーベル経済学賞受賞者の心理学行動経済学者であるダニエル・カーネマン(アメリカ)が提唱した言葉で、「何かの判断を行うときに、自分が注目する要因が持つ影響力を実際以上に重要視する傾向」と定義されています。

未婚より既婚の幸福度が高いからといって、「結婚したらしあわせになれるはず」という思い込みがそれにあたります。

幸福の因子として配偶関係の違いは確かに存在しますが、単純にそれだけが要因ではなく、他の因子としては、経済状態・健康状態・人間関係・仕事の充実などもあります。ここでは、そのうち「結婚意欲」と「お金・収入」について深掘りします。

■「年収が高いほど幸福度が高い」という現実

未婚男女を対象に、年代別・年収別の幸福度の違いを見てみましょう。あわせて、結婚に対する前向き度・後ろ向き度の違いもクロス集計してみます。結婚前向きとは「結婚したい」と考えている層、後ろ向きは「結婚はまだ考えていない・したくない」と考えている層です。

結果は以下の通りです(図表2)。

まず、幸福度を見ると、男女ともにやはり年収が高いほど幸福度も高く、500万円以上がもっとも高くなります。同時に、20代の若者だけで見ると、女性は年収の多寡に関係なく、結婚前向き層の幸福度が高く、男性は年収が高く、かつ、結婚したいと思う20代の幸福度がダントツに高い傾向があります。

■最も不幸なのは「年収500万円以上の不本意未婚」

男性だけは若い20代のうちから「稼ぎ」という部分がその幸福度に大きな影響を及ぼしているようです。反対に、結婚後ろ向き層は年代問わず幸福度は高くもなく低くもなく中程度でほぼ一定です。

次に、不幸度を見ると、男女とも40代~50代において「結婚前向き」層の不幸度がもっとも高くなっています(図表3)。前述した通り40代~50代中年世代は年代別にはもっとも不幸度が高いのですが、結婚意欲別にみると「結婚したいのに未婚のままの40代~50代」がもっとも不幸度が高いということになります。

そして、興味深いことに、幸福度は年収に比例して幸福度も高まるのですが、結婚前向き層の不幸度は、むしろ年収500万円以上がもっとも不幸であるということです。

ここからわかるのは、確かに年収が高いほうが幸福度も高いのですが、結婚意欲とのクロス集計でみると「結婚したいのにできない不本意未婚」の場合、たとえ年収が500万円以上あっても、いや、逆になまじ年収が高いがゆえに、相手への選り好みが激しくなり、結果未婚のまま中年を迎えた時に不幸感が最大化していると解釈することもできます。

そもそも、たとえ年収が高くても、「不幸感満載」のオーラを出している相手と結婚しようと思う人は男女問わずいないのではないでしょうか。さらに、そこに「結婚さえすれば、俺は(私は)しあわせになれるはず」という強烈な念で婚活していると、相手も何かを貪(むさぼ)り取られてしまうのではないかという恐怖すら覚えてしまうことでしょう。

■「結婚で一発逆転」がそもそも間違っている

身も蓋もない言い方ですが、自らの不幸を結婚によって一発逆転しようとして、中年になって、マッチングアプリに手を出したり、結婚相談所に駆け込んだりしてもうまくいきません。結婚もできなければ幸福にもなれないでしょう。

結論をいえば、「結婚したからしあわせになれる」のではなく「しあわせな状態だからこそ結婚という道が見えるようになる」のです。先に実現させるのは「自分のしあわせ」のほうです。

前掲したグラフを再度確認していただきたいのですが、結婚前向き層の幸福度は男女とも20代がもっとも高く、30代以降急激に減少しています。これは、30代以降結婚したい未婚男女の幸福度が下がるのではなく、元々幸福度の高い層から結婚し、未婚から既婚へと属性が移動していくためです。それが、既婚男女の幸福度の高さへとつながっているのです。

結婚すれば幸福になるのではなく、未婚のうちから幸福な者同士が結婚しているということです。結婚とはそれによって幸福を得るものではなく、互いに幸福な男女が自分の幸福を分かち合いたいと願うカタチです。

■若者の幸福度の低さは、中年のそれと同じ

そう考えるとも昨今の少子化の原因でもある若者の婚姻数の激減とは、「かつて幸福だった若者たちが幸福でなくなったから→若者幸福度の中年化」ではないでしょうか?

少なくとも若者の経済環境は悪化しています。バブル崩壊、就職氷河期、リーマンショックデフレ不況、コロナ禍と90年代からの「失われた30年」において経済的に割りを食ったのは収入の少ない若者層です。

その間、税金や社会保険料はステルス値上げされており、可処分所得は減り続けています。おまけに、直近のインフレによってただでさえ減っている実質可処分所得もさらに圧迫されています。

内閣府「国民生活に関する世論調査」によれば、「日常生活での悩みや不安を抱える割合」は、今の50代が20代だった頃の1996年43.1%に対し、2022年は77.8%に達します。30年弱で不安が倍増しているわけです。

■若者が結婚しなくなった本当の理由

不安は行動を抑制します。生活に困るほどの困窮ではないにせよ、若者自身が自分の未来に不安しか感じられなくなる今の空気感は、彼らの行動を委縮させ、何もしないことで若者は自らの達成感を感じられず、結果として結婚意欲も持てず、未婚化や非婚化をさらに進行させてはいないでしょうか。まさに「貧すれば鈍する」です。

元気なのは、そうした影響のない一部の大都会大企業勤めの若者だけで、多くの中間層の若者が結婚・出産という行動の放棄に向かっています。

少子化を憂うならば、まず若者の不安を増幅させている経済的不安を払拭し、せめて彼らが「不安なく行動できるお膳立て」を整えることが先なのです。「若者を幸福に」などというと途方のない話か宗教チックに感じられるかもしれませんが、そんなに難しいことでもありません。若者が行動できるようになればおのずと変化が起きます。

でないと、若者が若者のまま40代~50代未婚者のような不幸オーラに覆われ、結婚や出産は消滅してしまうでしょう。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Satoshi-K

(出典 news.nicovideo.jp)

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