【社会】「天下りではないか」道路会社の社長人事 やっぱり国交省OBばかりのナゼ 大臣どう説明?
【社会】「天下りではないか」道路会社の社長人事 やっぱり国交省OBばかりのナゼ 大臣どう説明?
高速道路6社の次期社長人事を一括して国が了承しました。その半数が国交省OBと明かされた会見で「天下りではないか」との批判も出ましたが、国交相はこれを否定。どう説明したのでしょうか。
社長人事案を国交省でまとめて大臣が認可 鉄道と高速道路の違い歴然
国土交通省は2024年5月21日、政府が出資する鉄道会社と高速道路会社の会長と社長人事について、閣議口頭了解を得たことを公表しました。各社が6月に開催する株主総会を経て正式決定し、国土交通大臣に認可申請します。同日開催された斉藤鉄夫国交相による閣議後会見では、「国土交通省出身者が多すぎるのではないか」という批判も出ました。
経営の思わしくないJRグループの鉄道会社と民営化した高速道路会社は、財務省が株を所有する特殊会社です。経営トップの人事は国土交通大臣の認可が必要です。その対象となる9社の会長と社長予定者の人事案が示されました。
鉄道会社では、JR北海道、JR四国、JR貨物の3社が対象です。JR北海道とJR四国については、会長・社長いずれも旧国鉄と民営分社化後の同社出身者が新任または再任予定です。貨物は会長に、旧興銀(みずほフィナンシャルグループ)から部長として移籍、社長には間組(現安藤ハザマ)から営業支店長として移籍後にキャリアを積んだ人物が再任予定です。
高速道路会社はNEXCO3社(東日本高速道路、中日本高速道路、西日本高速道路)と本四高速、都市高速の首都高速と阪神高速の6社が対象です。うち、いわゆる生え抜きで新任または再任予定は、首都高速と西日本高速の2社です。外部登用も1社ありますが、主要な3社は国交省OB(旧建設省)出身者です。5月21日の会見で斉藤鉄夫国交相は、次のように話しました。
「東日本高速道路の由木文彦さん、中日本高速道路の縄田正さん、それから、阪神高速道路の吉田光一さんは、国土交通省OBでございます」
高速道路会社は会長ポストがなく、いずれも社長の人事です。3者はいずれも旧建設省出身で道路行政に携わってきました。
由木氏は公職を辞し、三井住友海上火災の顧問に就任した後、2022年から東日本の社長で現職、今回認可されると2期目です。縄田氏は国交省高速道路課長を経て東日本の部長から執行役員となり、再び公職へ戻り環境省で退任。東京海上日動の顧問を務めた後に日本橋梁建設協会専務理事、中日本高速部長に移り、同社長に就任の予定です。また、阪神高速の吉田氏は、国土交通審議官を最後に退任。損保ジャパン顧問に就任後、2020年から阪神高速社長に就任し、3期目を迎える予定です。
いわゆる天下りではないか、という批判に斉藤国交相は…
特殊法人と呼ばれた道路関係4公団が民営化されたのは2005年です。高速道路は税金を投入しないのが基本で、財政投融資などの公的資金で借り入れを起こし、高速道路利用者の通行料金収入で返済しながら運用します。巨額な借り入れと利用者負担軽減を両立させるためには、民営化による民間活力で増収することが課題でした。
しかし、旧建設省出身の官僚が退任後に冷却期間を置いた後、社長に就任するというキャリアルートが定番化して、高速道路料金の引き下げにつながるような経営視点を持った人材の登用実績がありません。
会見では自動車雑誌の編集長でもある神領貢氏から、人事は適切かという質問がなされました。これについて、斉藤氏は次のように答えています。
「いずれもその実績と経験手腕がそれぞれの会社において評価され社長に適任であると判断されたものと承知しております」
公務員の天下りは2008年12月、麻生内閣で施行された改正国家公務員法によって、現職の公務員職員による退職者への「再就職あっせん」が全面禁止されました。内閣府に再就職等監視委員会も設置され、監視も行われています。これによって天下りはなくなったとされています。
ただ国土交通省をめぐっては、そのOBが人事に介入した問題で、2023年6月に現職の航空局長が懲戒処分を受けています。これについても斉藤氏が言及しました。
「(改正法により)政府関係の特殊会社の役員についてもしっかりと第三者の目をもって客観的に検討するという、そういう流れにいたしました。制度の上でも、かつ現実も適材適所の人がなるように、いろいろな応募の方の中からいろいろな評価項目を設けて、評価点をやって客観的に選ぶというようなプロセスが生まれております」
「昨年もOBの問題もございましたが、いわゆる現役との関係、また昔いた役所をバックにした人事というのは、いま徹底的に影響力が排除されている。そういう仕組みになっております」
さらに、「今回の人事は、そういう意味で、適材適所の人がなっていると、このように私は確信する」と強調しました。
2005年10月に日本道路公団など道路関係4公団が民営化され18年。文字通り特殊な民間会社の形は続いています。