「博多ラーメンは“カタ”で頼め」定説に異変? 人気店が「普通」「やわ」を推奨する理由とは
「博多ラーメンは“カタ”で頼め」定説に異変? 人気店が「普通」「やわ」を推奨する理由とは
「博多ラーメンは“カタ”で頼め」定説に異変? 人気店が「普通」「やわ」を推奨する理由とは | ニコニコニュース
博多ラーメンといえば、白濁した豚骨スープに細麺が特徴。「バリカタ」「粉落とし」という“用語”も広く知られており、大抵の人は「かため」こそが本場で親しまれていると思っているのではないか。
ところが、「普通」「やわ」がおすすめと発信する有名店も存在する。なぜなのだろうか。福岡を中心に全国・海外に30店舗以上を展開する人気店「博多 一幸舎」の運営会社・株式会社ウインズジャパンホールディングスの広報・稲田氏に話を聞いてみた。
◆博多ラーメンはなぜカタ麺で食べるのか
博多ラーメンを食べる時の麺の硬さといえば「カタ」「バリカタ」がポピュラーで、チャルメラ(明星食品)も袋麺やカップ麺でバリカタを出しているほど。
ルーツについては所説ある。そのうちのひとつが福岡の市場だ。魚市場のあった長浜地区では市場関係者が忙しく働いており、彼らはサッと来店してサッと食べるために茹で時間の短いカタ麺を好んで食べるようになった。麺が細いのも同様の理由であり、加えて細麺だと麺が伸びるのも早いため、少量ずつ分けて食べる替え玉の文化が広がった。
◆本当に食べてほしいのは「普通」か「ヤワ」
さて、「博多 一幸舎」は公式SNSで、定期的に次のような投稿をしている。
<「豚骨ラーメンはバリカタやろ」って気持ちは分かるんですが、一幸舎がおすすめしている麺のかたさは「普通」か「やわ」なんです(後略)>
「かため」が当たり前という風潮に、一石を投じるような投稿。その真意について、稲田氏はこう答える。
「『普通』の硬さを基準として、博多一幸舎の濃厚なスープに合う特注の麺を作っています。だからこそ『普通』をおすすめしています。また、モチッとした食感が特徴の麺なので、茹でる前からしなやかな状態なんです。つまり、『粉落とし』や『ハリガネ』というオーダーは生麺でも提供が難しく、店舗では『バリカタ』までの硬さしかお受けできません」
たしかに、商品開発では「普通」を基準として味を追求していくのは当然。しかし、「やわ」までおすすめしているのはどういった理由なのか。
「スープの味や麺の食感だけでなく、全体のバランスにこだわってラーメンを作っています。『普通』『やわ』の麺はスープとよく馴染むため、麺の食感だけでなく、小麦の香りまで十分に楽しんでいただけると思います。特に先述したようなモチッとした食感がお好きであれば『やわ』はおすすめです」
◆カタ麺を推していない店も一定数存在する
同店以外の博多ラーメン店も“非カタ”を推奨しているのか。前出の稲田氏は「それぞれのお店によってこだわりは様々であるため、一概には言いにくく、あくまで推測ではある」としつつ、「麺は小麦粉で作られていることが多いので、『しっかり中まで火の通ったものを召し上がっていただいきたい』と考えていらっしゃる店主さんも多いのではと思っています」という意見を述べてくれた。
事実、同じく福岡に店を構える人気店「魁龍」では、注文時に「ずんだれ」と呼ばれる超ヤワ麺を勧められるし、店内にはカタ麺を否定するような掲示まである。
また、よく探せば“非カタ”を推すラーメン店主の声はネット上でも散見される。さらに、ある調査によると、福岡のラーメン店の6割以上が「普通」をおすすめとしており、「バリカタ」を勧めている店舗は1軒もなかったという。
◆「普通」も「やわ」も食べたことがなかった筆者
福岡で生まれ育った筆者だが、当たり前のように“カタめ以上”で注文してきた。ラーメン店でアルバイトをしていた時期もあり、賄いを含めれば数千杯のカタ麺を食べてきたことになる。しかし、「普通」「やわ」に関しては恥ずかしながら未体験。ただ、今回の取材を行った以上、食べないわけにはいかない。博多駅前にある「博多 一幸舎 総本店」で実食してみることにした。
まずは、普通で注文。見た目としては大きな差はない。ただ、一口目からその違いは鮮烈だった。スープの絡み方が全く違う。濃厚なスープをたっぷりまとった麺が口の中に入ってくる感覚は、カタとは段違い。おかげで、普段より強い豚骨みを鮮烈に感じられた。
替え玉に「やわ」を注文したが、ここでミスが起きる。これまでは最初の麺を食べ終わる2口程度前で注文すれば、タイミングよく替え玉が提供されていたわけだ。しかし、「やわ」は茹で時間が長いということをすっかり失念しており、2分近く手持ち無沙汰の時間が発生してしまった。
提供された替え玉をスープへ投入し混ぜ、麺を持ち上げるーーこれまで博多ラーメンでは体感したことのない、ずっしりとした重さがあった。
口に運んでみると、「普通」に比べても段違いのもっちり感だ。麺を咀嚼してその食感を楽しんだ。同時に感じられたのが、小麦の風味。濃厚なスープの味に負けず、口に広がる香ばしさは美味の一言。
今回の体験を経て、これからは「普通」と「やわ」を注文する機会が増えることは間違いない。
◆1度くらいは試しても良いのでは?
「博多ラーメンならカタ」というイメージは色濃いようで、福岡県民も県外やインバウンドの観光客も「カタを注文したい」という声は多いそうだ。
「その際は『替玉で、やわ麺を頼んで食感の違いを試してみて下さい!』とおすすめすることもあります。そうして、やわ麺を召し上がったお客さまからは『ツルモチの麺がすごくいい!』『やわ麺の方がスープとよく馴染んで美味しかった』『しっかり茹でたやわ麺と伸びた麺との違いがわかりました!』と、お喜びの声をいただくこともあります」
こうした草の根的な呼びかけもあって、博多ラーメンの“本来の”美味しさが徐々に広まっているようだ。
稲田氏曰く、「硬い麺も、博多のラーメン文化の一部として捉えています。本場ならではを味わいたい方やお客さまのお好みで楽しんでもらいたいです」とのこと。とはいえ、筆者の感動を味わってもらいたいので、1度くらいは試してもらいたいものである。
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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