心配ごとの91.4%は実際には起こらない…「残りの8.6%」がそれでも気になる人に届けたい「幸福の知恵」
心配ごとの91.4%は実際には起こらない…「残りの8.6%」がそれでも気になる人に届けたい「幸福の知恵」
心配ごとの91.4%は実際には起こらない…「残りの8.6%」がそれでも気になる人に届けたい「幸福の知恵」 | ニコニコニュース
■「悪い予測のほとんどはハズれる」という事実
未来を心配するのは、無意味で愚かしいことです。
何の利益もなく、自分の心を苦しめるだけだと言い切れます。実際、「未来への不安はほぼ現実化しない」という研究結果も出ています。2020年にペンシルバニア州立大学で実施された研究(※)に、大変面白いものがあります。
29人の参加者にそれぞれ10日間にわたり、心に浮かんだ心配ごとを記録してもらい、それらに根拠があるかどうかを調べたそうです。結果、心配ごとのうち最も多かったのは「まったく根拠のない心配ごと」でした。
さらに「なんらかの根拠がある心配ごと」についても、30日間にわたって追跡調査をしたところ、その91.4%は実際には起こりませんでした。
この結果からわかるのは、「私たちが日々心を悩ます心配ごとは、かなり的外れで、ほとんど現実化しない」ということです。
心配ごとに取りつかれ不安にさいなまれている最中は、それがとてもリアルに感じられるものです。しかし、それはわき起こった不安が、そうさせているだけ。ですから「心配ごとの多くは無根拠で、悪い予測のほとんどはハズれる」という事実を知っておくと、うんとラクになります。
※ペンシルベニア州立大学の研究によると、不安障害の人の心配ごとの91.4%は当たらないことがわかりました。心配が当たらない確率が高い人ほど、不安を改善しやすいそうです。つまり、不安を消し去るには、心配が的外れであることを実感することが大切なわけです。〔La Freniere, L. S.,& Newman, M.G.(2020).“Exposing worry’s deceit: Percentage of untrue worries in generalized anxiety disorder treatment.” Behavior Therapy, 51(3), 413-423.〕
■でも、「残りの8.6%」がもし起きてしまったら?
そうは言っても、私たちの心は、「不安」からなかなか抜け出せません。
「心配が現実化するわずかな可能性」を、心は無意識に探し続けます。そして、私たちはそれをまるで「確実に起こること」であるかのように受け止めてしまいます。
そうなると、私たちは「到底起こりえないような不安」を、「確実な未来」だと信じ込み、おびえてしまいます。「取り越し苦労」で、人生を浪費してしまい、「いまを楽しみながら生きること」ができなくなるのです。これは、何とかしなければなりません。
先ほどお話ししたように、「不安」の91.4%は無駄なわけですから、無視すればよいのですが、「心」にとってはそれはなかなか難しいこと。なぜかというと、心は不安にフォーカスしたがるからです。怖いとわかっているからこそ、ホラー映画を観てしまう。そんな経験はありませんか?
私たちの心は、不安があることに気づくと、それをじっと見続けてしまうのです。実際、いま、あなたは「残りの8.6%」が気になっているはず。
「すべての心配ごとのうち、91.4%は無視してよい」と言われ、気持ちがラクになったはずなのに、今度は「残りの8.6%」が自分に当てはまるのではないか、と心配なのですよね。よくわかります。私もそうでした。
■心のバランスを取り戻す魔法の言葉
でも、それって、めちゃくちゃ疲れませんか? そして、あまりに悲観的だと思いませんか?
楽しくないまま、いまを過ごす生き方なんて、やめちゃいましょう。大げさに聞こえるかもしれませんが、命の無駄遣いです。
厳密に言うと「いま感じている不安」は、「未来の不安」ではありません。未来に対して、いま、わざわざ起こしている不安です。どうなるかわからない未来を変えることは大変ですが、「いま」ならすぐに変えられます。
つまりその不安は、いますぐ取り除けます。
未来のわずかな可能性のせいで、いまの心が不安で一杯になるなんて不健康です。
少ない可能性は、小さく心配したほうが当然合理的ですし、何より心を健やかに保てます。幸い、そのためのよい方法があります。
心のバランスを取り戻すテクニックなのですが、やり方は簡単。「いま」に集中して、不安な気持ちを次のように言い換えるだけです。
「未来も、ほぼ100%大丈夫」
この呪文は未来を追い払って、現在に集中するためのものです。どんな物事も、どこを強調して表現するかで印象ががらりと変わります。そして、大きな意思決定にまで影響が及ぶこともあります。
これを心理学では「フレーミング効果」と呼ぶのですが、この呪文はその応用です。人が損得を感じる基準点をズラすと、価値の感じ方まで変わります。具体的な例を見てみましょう。
■苦しくなったら、「メリット」があるほうを考える
あなたは、次のキャッチコピーのうち、どちらを選びたくなりますか?
②購入者の10%には、効果なし。
きっと①のほうが選びたくなったのではないでしょうか。内容はまったく同じなのですが、このように、「事態をよい方向に促す商品」の場合、「メリット」を説明した①のほうが、心により響くのです。
広告にもフレーミングというテクニックは巧みに取り入れられているわけです。私たちも、個人レベルでこうした小技をうまく活用していきましょう。
話を本題に戻しますね。
「未来も、ほぼ100%大丈夫」という呪文のどこが「フレーミング」なのかというと、「心が無意識にフォーカスするポイント」をズラしている点です。
私たちは、ともすると未来ばかりを見てしまいがちです。つまり、視点があまりに先すぎるので、心穏やかに過ごすためには、視点をときどき手前に引き戻さないといけないのです。
「不安な未来」と、「確実な現在」を比べてみてください。後者のほうが、ダメージをうんと抑えられますよね。
「90%以上」というか、「ほぼ100%」というかも同じです。あなたは、自分自身がラクになるほうを選んでいいのです。
そもそも、フォーカスを自分の気持ちひとつで自由自在に変えられるなんて、素晴らしいことだと思いませんか。(でも、思い込みがあると、それが途端に難しくなってしまうのです。人の心って複雑ですね)。
■「考え事をしていたら、家に着いていた」そんな人は要注意
普段から、私たちの心は常に未来を捉えているので、現在についてはボーッとしています。
「帰宅中、考え事をしていたら、いつのまにか家に着いていて、どうやって帰ったのかよく覚えていない」
そんな経験はありませんか? (私にも何度か経験があります)
それは「いま」を生きていないのと同じ。貴重な楽しみを、みすみす手放しているようなものです。
「そんなの、しょっちゅうだよ!」という人は、考え事の比重が未来に移りすぎて、「いまを忘れること」が多くなっているのかも。どうぞお気をつけくださいね。
こうした心の動きが癖として身についてしまうと、未来の心配に人生の大半を奪われ、味わうべき“いま”を失ってしまいます。
これは親しい精神科医に聞いた話ですが、悩みを抱えている人は「何かいいことないかな」というフレーズが、よく口癖になっているそうです。つまりフォーカスが未来に向いていて現在にない。それが「しんどさ」の表れなのだとか。
そのような場合、「いいことが来る!」「いいことが起こる!」と、現在形の断定口調に変えると、フォーカスが現在に引き戻され、生活が充実しやすくなるとのこと。
現在への集中が、人生を豊かにするわけですね。
■いまが“台無し”になったとき、どう考える?
あるカナダの心理学者が著書の中で、幸せになるためのヒントをいくつか挙げているのですが、その最後を「道で出会った猫を撫でる」で締めくくっています。
いま、可愛い猫にたまたま出会ったことに気を留める。それを撫でて柔らかさや暖かさを感じる。その猫と心を通わせ、優しい気持ちになる……。そんな“ちょっとした幸せ”を見逃してはいけません。
いま、確実にそこにある幸せを、しっかりと意識したいものです。
いま、手にしたカップから立ち上るコーヒーの芳醇(ほうじゅん)な香りにうっとりしたり。
いま、目の前にいて他愛ない話をする人の幸せを願ったり。
いま、あびたシャワーの温かさに全身がほっこりする心地を感じたり。
いま、YouTubeで見つけたチャンネルのおかしさで心を一杯にしたり。
よくよく考えると、私たちの「いま」は楽しむことにずっと忙しいのです。ですから「未来を心配している無駄な時間」などありません。
いまにフォーカスできるようになった場合、いまが“台無し”になったときは、失望をより大きく感じることがあります。
②「予想しなかった出来事」を、ラッキーと思うか
一般的に、①の考え方をする人は、「予想した通りのことが起こってほしい」人ですから、未来に対するフォーカスがやはり強いといえます。
■「ああではない」から、「いまこうである」と転換しよう
一方、②の考え方をする人は、現在の“受容度”が高い人です。総じて、こちらのほうが幸福度は高くなります。なぜなら、つらいときにフォーカスをより手前に引き戻すことができる人だからです。もう一度いいますが、未来など、どうなるかわかりませんし、心配ごとはほぼ100%現実にはならないのです。
「フォーカスを手前に引き戻す」という小技は、誰でもすぐにできる、最も簡単にして最強のテクニックです。
例えば、マラソン大会に向けて毎日ランニングを続けているとしましょう。努力が思うように実らないときでも、「なかなかタイムが伸びない」とがっかりする(=“いま”の状態を残念に思う)のではなく、いま、大会に向けて走っていること自体を楽しむべきです。健康な証拠ですし、何よりも体力ももっとつくのですからラッキーです。
言い換えると「ああではない」と嘆くのではなく、「いまこうである」を楽しむことが大事なのです。
子どもが何事も無邪気に楽しめるのは、どんな状況であろうと「いま」にフォーカスしているから。「ああではない」と別の「いま」をほしがったりはせず、「いま、こうである」を満喫しているからです。
つまり、置かれた状況で、何らかの面白味を発見しようとする姿勢が大事なのです。
■「いまやりたくない仕事」はどうするか?
仕事の場合も同じです。どうしても気持ちの乗らない仕事もあるでしょう。自分にとっても、会社にとっても、何かしら意味があるとは思えないような仕事もあるものです(いわゆるブルシットジョブですね)。
可能なら、それを避ける方法を考えましょう。担当を誰かと代われないか掛け合うのも一つの方法でしょう。あなたにとっては、つらい仕事でも、同僚にとっては「いまやっている仕事よりはマシ」かもしれません。
そうであれば、喜んで代わってくれるでしょう。たしかに、そんなに都合よくいかないかもしれません。でもそれがきっかけで、もっとよいやり方を教えてもらったり、業務を見直そうという社内の機運につながったり、「え、それってやらなくていいやつだよ」ということがわかるかもしれません。
最もまずいのは、自分で「やらないといけない」と思い詰め、閉じこもってしまうことです。愚痴を聞いてもらうだけでもよいので、周りの人も巻き込んで、力を借りることは(あなたがストレスをためこまないためにも)重要です。
その上で、「どうしても避けられない」のなら、フォーカスをもっと手前に引き戻して楽しまなくては損です。「嫌だ」と思っていても始まりません。
■仕事のミスは、未来の大きな失敗を防いだと考える
嫌な仕事は、特に長く感じるものです。どうせ時間がかかるのであれば、その作業中に感じられる楽しみを早く見つけ、それを味わいながら仕事をこなすほうがいいでしょう。
また、「嫌な仕事」を次のように脳内でポジティブ変換することも、精神衛生上、大きなメリットがあります。
「仕事でミスをした」
(ポジティブに言い換え→)「これは何か他の大きな失敗と引き換えに先取りしたのだな。この程度で済んでよかった!」
「明日までにどうせ選ばれないアイデアを100個考える」
(ポジティブに言い換え→)「次の1個で人生変わるかも!」
「たった一度の会議のためだけに、大量のコピーを用意する」
(ポジティブに言い換え→)「これは疲れた脳を休ませるチャンス到来!」
「会議室の8人の重役に、コップに入ったお茶を一滴もこぼさず出す、という至難の業」
(ポジティブに言い換え→)「ミッション・インポッシブル!」
これも、先ほどのフレーミングというテクニックと同じ。未来にフォーカスするのではなく、「いま」に集中しましょう。
先ほどの例で言うと、「この程度で済んでよかった」と状況に感謝したり、「チャンス到来」と捉えてみる。あるいは、「ミッション・インポッシブル!」とワクワクしてみる。
■「時間の長さ」は人の主観によって変えられる
この「フォーカスを手前に引き戻す」小技こそ、自分自身の心を守る、最も簡単にして最強のテクニックです。
秘訣(ひけつ)はすべて「いまを楽しもう」と試みること。無理は決してしないこと。そして「私は、それが嫌なのだけど」と自分に言う代わりに、あえてその中に楽しみを見出すようにすると、楽しく感じられるものです。
「楽しんでしまえなんて、子どもでもあるまいし、ばかばかしい」
そう思われるかもしれません。しかし、人生には避けられないこともあるとご存じでしょう。避けられそうにないことを、なんとか避けようともがき続けるより、楽しみながら乗り越えるほうがいいですよね。それが、大人の知恵でしょう。
「時間とは長さ」と思っている人は多いものです。でも、実はそうではありません。
多くの人が、「時間」を数値化された「長さ」「量」として考えがちですが、実は非常に個別的で主観的なもの。まずはその原則を心に留めておいてください。
私たちは、過去でも未来でもなく、いまにしか生きられません。終わった過去や、まだ見ぬ未来に心をとらわれる癖からは卒業しませんか。
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政治社会学者
Screenless Media Lab.所長、東京都立大学客員研究員ほか。博士(社会学)。単著に『データ管理は私たちを幸福にするか? 自己追跡の倫理学』(光文社新書)『善意という暴力』(幻冬舎新書)『人工知能時代を〈善く生きる〉技術』(集英社新書)ほか多数、共著に『人生を危険にさらせ!』(幻冬舎文庫)ほか多数。翻訳書に『アメコミヒーローの倫理学』(パルコ出版)がある。
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Screenless Media Lab.テクニカルフェロー、ディレクター。(株)XAMOSCHi代表。デジタル系プロダクションの設立を経て現職。日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(JDLADeepLearning for GENERAL 2017)、米国PMIR認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル、経営学MQT上級(NOMA)、ウェブ解析士(WACA)、日本マネジメント学会正会員(個人)。共著に『AIアシスタントのコア・コンセプト』(ビー・エヌ・エヌ新社)がある。
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RT マーフィー大先生「トーストを落とす可能性があるなら必ずいつか落とす。トーストを落とすときバターを塗った面が下になる確率は、落とした絨毯の値段に比例する。ただしその絨毯を買い替えようと思っている時は除く」 |
kikori 確率的に起きづらいから考えなくて良いというのはそれはそれで駄目だけどね。正常性バイアスに近い。実際のところ誰かがその不安を解消してたりするわけで、俺には関係無いとなならない。対岸の火事と考えていたら当事者になったとかよくある話。 |
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