「偏差値が低くなっている」は絶対ダメ…中学受験に失敗する親が口にしがちな「NGフレーズ」
「偏差値が低くなっている」は絶対ダメ…中学受験に失敗する親が口にしがちな「NGフレーズ」
「偏差値が低くなっている」は絶対ダメ…中学受験に失敗する親が口にしがちな「NGフレーズ」 | ニコニコニュース
■勉強は教えない、あれこれ聞かない
高校受験、大学受験と比べて、中学受験ならではの特色といえるのは「親子の受験」ということです。
受験勉強が本格的に始まる11~12歳は自我が芽生え始める時期です。自分の考えを持ち、それを押し通したくなる頃です。かといって将来のことを見据えて何でも自分で決められるわけではありません。学校選びや塾選びなどに親の意向が入るのは当然です。いかにしっかりした子でも、本人にすべて任せるのは現実的ではありません。
中学受験は親のサポートがなければ無理です。塾の送り迎えやお弁当作り、教材の整理など、安心して学べる環境を整えてあげることが必要です。
ただし、やりすぎるのはよくありません。
やりすぎないように気をつけたほうがいいことを、2点挙げます。
①中途半端に勉強を教えない
勉強を教えてあげる必要はありません。「こうやって考えてみたら?」「こっちの解き方のほうがいいんじゃない?」など、横でちょこちょこと言われると子どもは思考を邪魔されてしまい、やる気を失ったり反発したりすることが多いです。身内の甘えも出やすいので、自分で考えずにすぐに教えてもらおうとするクセもつきかねません。
■よかれと思ったつもりが、逆効果な声かけとは
②あれこれ確認しない
親は心配なのでつい「あれはやったの?」「ここはちゃんとできた?」と確認しがちです。しかし、言いすぎると逆効果です。子どもにとっては、信用されていない感じがしますし、大きなストレスになっていることが多いものです。親子の信頼関係が失われては大変です。関係を悪くしてまで頑張ることはないですよね。
わが子を心配し、応援しているからこそ口を出したくなるのですが、そこは言いすぎないように抑えなくてはなりません。
親が受験のサポートをするうえで大事なポイントをSAPIXの先生に聞くと「共感を大事にしてください」とのことでした。
塾ではハイレベルな授業を行なっています。子どもがそれについていっているだけでもすごいことです。家で怠けているように見えたとしても、塾ではすでに頑張っているのです。まずそれを理解して共感してあげてください。
親は、どうしても、子どもの「できていない部分」に目がいきがちです。間違えた箇所、できていない宿題、こなせていないスケジュール……。それでも、全部できていないわけではありません。できている部分があるし、頑張っているのです。
頑張っている子どもの気持ちに共感できたら、声がけの仕方も変わってくるはずです。
■勉強が足りなくても「頑張れ」と言ってはいけない
たとえば、次の二つの声がけを比べてみてください。
①「なんでここ間違えたの? 見直しなさいっていつも言っているでしょ」
②「ここをミスしたのは悔しかったね。こういう工夫をしたらどうかな?」
ちょっとした差のようですが、受け取り方は全然違います。
子どもにとって「自分の頑張りを親がわかってくれている」のは大きな安心感につながります。嬉しいときも、辛いときも、自分が頑張っていることをわかってくれる人がいると感じている子は、パフォーマンスが上がります。
子どもが勉強しているように見えないとき、その実情としては、大きく分けると三つのパターンがあります。
①親の要求水準が高すぎる
②短時間で理解できているので、勉強時間が短く感じられる
③実際に勉強が不足している
どのケースにあてはまるのかは、親自身では判断がつかないことが多いため、勉強が足りないように感じたら、塾の先生などに様子を聞いてみるとよいでしょう。
注意すべきは、①のパターンです。突きつめすぎると、子どもに必要以上のプレッシャーを与える可能性が高いのです。
「いいえ、単純にやる気がないんです」という声も聞こえてきそうですね。③の場合で親から言っても反発されそうなときは、「もっと頑張れ」は塾の先生など第三者に言ってもらってください。親に言われて素直に聞けなくても、先生に言われると驚くほど素直に聞くことがよくあります。
■やる気をもたせるなら「目の前のこと」を褒める
一般的には4年生から6年生の終わりまでという長い期間、受験に向けて頑張ることになります。好きな単元で集中して勉強をしているときがあったり、実際に中学校を見て「行きたい!」と思ったり、時折、やる気がアップすることはあっても、それをずっと継続させるのは困難です。頑張っても成果が出ないように感じればやる気も下がります。勉強以外のことに関心が向いているときもあります。
子どものやる気を継続させるには、目の前のことを評価することがとても大事です。
算数のテストで80点を取れた。前回70点だったから10点もアップした。そんなときは「できるようになったね!」と言ってあげてください。「できるようになった」と感じられるのは嬉しいものです。ちゃんと認めてもらえることがやる気につながります。
時々、せっかくテストの点数は上がったのに、平均点や偏差値を見て、
「今回のテストは簡単だったんじゃないか? ……やっぱりほら、平均点が高くなっている」
「偏差値は低くなっているから、もう少し頑張らないとダメだ」
などと、子どもに話す親御さんもいるようです。統計的にはその通りなのかもしれませんが、そんなところを突き詰めてできていないことを明らかにしても何のいいこともありません。
周りと比べてどうか、偏差値としてどうか、という指標も必要ですが、その子の頑張りを純粋に認めて評価してあげてほしいと思います。
■あえて“簡単な問題”をやらせる理由
自信をつけてやる気を持たせるためには、できる問題をあえてやらせるのも効果があります。
SAPIXの広野雅明先生は、6年生の算数の授業の冒頭に確認テストをして、できた子に手を挙げさせているそうです。大半の子が手を挙げます。これまでにやった問題と同じパターンのものを出題しているので、算数が苦手な子も復習さえすれば解くことができるのです。そして「みんなすごいね、できたね」とほめるのです。
その科目が苦手な子もいるかもしれません。でも、「できた人?」と言われて手を挙げることができると、それは嬉しいことなんです。最初に評価してあげれば、あとの授業も頑張れます。
広野先生は、教材の内容が難しいときこそ、最初に必ず計算テストのような基本問題をやらせるそうです。
これによって自信をつけさせ、やる気をアップさせているわけです。
あれもできていない、これもできていない……と思うときも、なんとか評価できるポイントを探して評価してあげることが大切なのです。
■受験期こそ「勉強以外の話」を積極的にする
共感を大事にすることのほか、SAPIXで保護者の方にもう一つお願いしているのは、「勉強以外のコミュニケーションを密にとってください」ということです。受験勉強に関する話ばかりではなく、学校のこと、習い事や趣味のこと。親子でさまざまな会話を楽しむようにしてください。
受験期になると、思春期にさしかかり、塾と家庭学習が忙しいのもあって一気に親子の会話が減ってしまうケースがあります。反抗的な態度も見られたりするので、お父さんお母さんも話しかけにくくなってしまうようです。
しかし、会話がないのはよくありません。子どもは悩みや心配事があっても、なかなか相談できなくなってしまいます。親も子どもの様子がわからないと適切なサポートができません。受験もうまくいかなくなります。「中学受験したせいで親子関係が悪くなった」と、のちのちまで禍根(かこん)を残すことにもなりかねません。
受験生だから無駄なおしゃべりは控えようと思わず、自然なおしゃべりを楽しむことです。親自身が家で楽しそうに過ごしていることが大事です。
■子供が長い時間考えていても、ぐっと我慢して
「思考力」をつけるためには、子どもの話を「聞く」ことも大事です。何の話であれ、子どもが自分で発信しようとしていることをちゃんと聞いてあげてください。
子どもが何かを長いこと考えていたり、全然違うことをしていたりすると、大人は先回りしていろいろと言いたくなってしまいます。そこをあえて我慢して、子どもが自分で考え、言葉にするのを待つのです。
もちろん、「さっきは、こういうことだったけど、今度はどうかな?」「これはこういう意味かな?」と適宜、助け舟を出すのがいい場合もあります。子ども一人では考えが進まずに困っている様子なら、言葉がけをしてあげてください。
ただし、子どもが何か考えようとしたり、発言しようとしたりしているうちに先に答えを言ったり、「つまりこういうことでしょ」とまとめてはいけません。これはかなり忍耐力のいることです。でも、こうすることで、子どもの自分で考える力や自己解決能力を高めていくことができます。
思考力は中学受験においても、人生においても非常に重要な力です。近年の中学受験問題は思考力を問うものが多いですが、それは考えることをいとわず、自ら解決に向かえる力のある子を学校も求めているということです。
■個別授業にはない集団授業のよさとは
なお、思考力は、受け身の授業や知識の習得だけでは身につきません。自分で考える練習が必要です。といっても、自分一人でウンウン考えていても先に進まないことは多いですし、幅も広がりません。中学入試では、自分とは違う境遇の人の視点で考えることができるような視野の広さも問われることがあります。さまざまな視点を取り入れることで、思考力も深まります。
SAPIXでは、討論式授業によって思考力を伸ばすようにしています。先生が問題提起をし、子どもたちが考える。子どもたちは自分の持つ知識をもとに、いろいろな案を出します。他の子の意見が刺激になり、「なるほど、それならこういう案もある」というように考えが進みやすいのが集団授業のいいところです。
子どもたちが自分で考え、友だちの意見も聞きながら思考を深めていくのは、とても楽しい経験です。もっと知りたい、考えたいという気持ちになります。
家庭でも、子どもの話を聞いて適宜考えるヒントを出せれば、思考力を伸ばすことができます。大事なのは、できる限り答えを教えないことです。親も一緒に考えて意見を言うのであれば、それはいい刺激になり、思考を深めることになるでしょう。
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教育・学習ライター、絵本講師
教育・学習ライター、絵本講師。東京都立大学教育学科卒業後、商社勤務を経てライターとして独立。多くの実用書制作に携わる。二人の子どもを出産後は、子育て・教育系の書籍、子ども向けの書籍制作がメイン。「本と教育」に興味があり、絵本の読み聞かせ活動にも積極的に関わっている。自著に『文章上達トレーニング45』(同文舘出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(Gakken)がある。
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