なぜ10万円のカツサンドが飛ぶように売れるのか…
なぜ10万円のカツサンドが飛ぶように売れるのか…
なぜ10万円のカツサンドが飛ぶように売れるのか…コスパ思考では絶対見つけられない"次のブルーオーシャン" | ニコニコニュース
※本稿は、浜田寿人『ウルトラ・ニッチ』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■「やっぱり、あの経営者はクレイジーだな」
WAGYUMAFIAの世界展開は香港の「WAGYUMAFIA HONG KONG」から始まりました。
起業家としてたいへんなセンスの持ち主である、ジェロという香港のビジネスパートナーを得て、現地ではすでに5店舗、WAGYUMAFIAグループの店舗が広がっています。
最もびっくりしたのは、世界で新型コロナの感染拡大が進み、日本でも緊急事態宣言が出ていた2020年5月にも、彼が出店を取りやめなかったことです。
日本でも海外でも、僕が付き合っていた経営者のほとんどが、お店のオープンを延期していました。ところがジェロは、延期するどころか、「早めよう」と言ってくれたのです。
まだ、香港の先行きが見えないタイミングでした。しかし、こんなタイミングでオープンする店はまずない。だからこそ、話題を呼び、大ヒットするのです。
もともと弁護士で、数字にもとても細かいのですが、それでいて大胆な決断ができる。張るときはガーンと張る。こういうパートナーと出会えたことは、本当にありがたいと思っています。
共同経営者の堀江(貴文)ですら、ジェロの決断に対して、「やっぱり、あの経営者はクレイジーだな」と言っていたくらいです。
■自分より優秀だと思う人から学ぶ
さらにジェロは、「早くもう一軒、開きたい」と言っています。
香港は、政治問題でも混乱が世界に伝えられている。そんな中でも、「こういう大変なときだからこそ、交渉していい物件が安く借りられる可能性がある。だから、やりたい」と言うわけです。
僕自身、彼の経営のやり方に大きな影響を受けています。彼は、各店から日報を上げてもらい、それを緻密に分析していく。その手法はとても参考になりました。
香港で10店以上のレストランの経営をしている人たちのノウハウが、すぐ目の前で見られるわけですから、これは極めて貴重です。
「WAGYUMAFIAにおんぶにだっこで」などという考えのパートナーだったら、こうはいきません。何の勉強にもならないわけです。
自分より優秀だと思える人から学ぶことは、若い頃から心がけてきたことですが、今もそれは大切だと改めて感じています。
■香港でどうしてもやりたかった業態
彼のような大胆なパートナーだからこそできた、思い切った新しい事業があります。WAGYUMAFIAがプロデュースするラーメン店です。
これは、最初のライセンス契約の条件にも入っていました。それは「WAGYUMAFIAと他に何か新しいプライベートブランドを1つ作ってほしい。そしてその会社をジョイント・ベンチャーで作ってほしい」というものでした。
パートナーで大事にしたいのは、ウインウインの関係を作ること。
そこで僕は、「香港であればどうしてもやりたい業態がある」と伝えました。それが香港で初めて登場した「MASHI NO MASHI」という和牛専門のラーメンブランドです。
アジア有数のラーメン店舗が集まった都市である香港で、地元のニーズを掴んで大ヒットし、現在では香港2店舗、東京1店舗、シンガポール、ラスベガス、ロンドン、パリへの展開を計画しています。
■1杯1万円、1日1時間のみ営業の和牛ラーメン
日本のMASHI NO MASHI TOKYOは、香港から逆輸入する形でオープンさせました。
大きな話題になったのは、提供する和牛ラーメンが1杯1万円だったこと。そしてスタート時は1日1時間のみの営業というスタイルを取ったことです。
1万円のラーメンというのは、日本にはなかった。ラーメンの世界では1000円の壁という言葉があった中で、あえてその10倍の1杯1万円の価格帯を出すことでインパクトがあったのです。
どうして1万円だったのか。もちろん和牛を使っていますから、コストも圧倒的にかかっているわけですが、もうひとつはラーメンの世界に一石を投じたかったからです。
たとえば500円のラーメンでも、ラーメンを茹(ゆ)でて、スープを入れて、サーブするというアクションは同じ。でも、20杯出さないと1万円にはならない。「大量に安く」であり、「薄利多売」です。
それで果たしてうまくいくのか。従業員のみんなに、満足のいく給料が払えていたのか。誇りを持って仕事ができていたのか。僕は、それを問いたかったのです。
■その仕事は「サステナブル」なのか?
高級食材を扱い、価格を高くし、利益率を高めることで、そこに変化を起こせるのではないか。
安くて大量に出さないといけないものは、これから機械化もされていくでしょう。人がやらなくてもいい仕事になっていく可能性があるということです。
そして労働環境も変えられる。長時間労働も減らすことができる。これもまた、高級食材を扱い、価格を高くし、利益率を高めることで解決できる。
安くていいものを出すことは、消費者にはうれしいかもしれない。
しかし、みんながハッピーに仕事をして、満足のいく収入を得て、サステナブルに事業を営むことが難しいのであれば、それは目指すべきことなのかどうか。
■需要を掘り起こして、新たなマーケットを作れ
コロナ禍がやってきて、薄利多売でやってきた会社は、本当に厳しい状況になっています。もともと僕はそもそも数百円でラーメンが食べられること自体、おかしいことだと思っていました。労働力換算で考えても、ありえないのです。
この先は2000円のラーメンが当たり前のように出てくると思っています。今は1000円の壁と言われているようですが、1000円でも安すぎる。世界に出れば、一風堂のラーメンを2杯食べて、ちょっと何か追加すれば、ロンドンでも7500円くらいになります。
日本の食も、デフレ傾向から、世界的な都市の価格に近づく転機になると思っています。そうでなければ、本当にやっていけないから。
ハイエンドな価格帯ながら、WAGYUMAFIAが成功できたのは、外国人をターゲットにしたことです。しかし、それ以上に重要なことは、僕たちは最高級和牛専門店や和牛カツサンド、1万円のラーメンなど、従来は存在しなかった需要を掘り起こして、新たなマーケットを作ったことです。
■日本のブルーオーシャンは「高価格帯のマーケット」
そして、日本の高価格帯のマーケットは、まだまだ日本ではブルーオーシャンだと思っています。チャンスがたくさんあるということです。
ロンドンのメイフェアにある高級レストランの中には、1店舗で年商80億円を売り上げるところもあります。月に6億円から7億円。1日2000万円です。
世界には、ハイエンドなレストランがたくさんある一方、日本にはまだほとんどない。WAGYUMAFIAはその一端に踏み出すことができたのです。
カツサンドも最初、1000円と2万円のバリエーションから始めましたが、その後は5000円から始まり、ドライエイジングの神戸ビーフカツサンドは3万5000円。兵庫県畜産共進会、いわゆる神戸牛チャンピオンシップ大会で最優秀賞を受賞した和牛のカツサンドは10万円です。
それでも買ってくれる人がいる。
■ハイエンドの市場を作ることで生産者と一緒に成長できる
ハイエンドの市場を作り、マーケットを広げることは、生産者から安定して買い付けができることにもつながります。そのためにも、海外展開をする一方で、やはり国内のWAGYUMAFIA、MASHI NO MASHIの店舗を拡大していかなければいけないと思っています。
最も高価な和牛を海外に輸出できれば、和牛の関連商品も一緒に売れていきます。WAGYUMAFIAで使っている調味料や米などの食材をはじめ、海外の店舗で使う特注の器も、僕たちがキューレーターや作家と話し合いを重ねて、いいものを買って海外に広めたいと思っています。
徹底的に見えないところにこだわる。高いものが売れるから、高い素材や器もともに売れる。
かつて、日本でも有名なフレンチの巨匠アラン・デュカスから、「日本食が日本の食材と連携できていない」とアドバイスされたことがあります。それが少し進化して、WAGYUMAFIAのスタイルになりました。これもまた、WAGYUMAFIAを、誰にもまねのできないものにする戦略のひとつです。
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WAGYUMAFIA JAPAN 代表取締役、WAGYUMAFIAエグゼクティブシェフ
1977年生まれ。米国留学の後、20歳でソニー本社最年少入社。カフェグルーヴを22歳で立ち上げる。映画メディアCINEMACAFEを創立し、会員制フレンチレストランのプロデュースを経て、ハリウッドの食ドキュメンタリー映画『フード・インク』の買付・配給を契機に和牛の世界へ。2014年より和牛の本格輸出を開始。2016年に友人の堀江貴文とともにWAGYUMAFIAを立ち上げ、ワールドツアーを世界100都市にて敢行する。WAGYUMAFIAの活動を通して、「世界で勝てる日本の食ビジネス、日本の高級商材は他にもたくさんある」と、日本に眠る未来の和牛のようなウルトラ・ニッチを発見し、育成、応援することをライフワークとしている。また、才能溢れる若手シェフなどの海外展開へのアドバイスなども積極的に行っている。
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