【働き手が足りない】都心のコンビニ「23時閉店」にしても埋まらぬシフト・・・コンビニの男性オーナー 「2022年2月に1日、休めたのが最後、もう2年以上、休んでいません」
【働き手が足りない】都心のコンビニ「23時閉店」にしても埋まらぬシフト・・・コンビニの男性オーナー 「2022年2月に1日、休めたのが最後、もう2年以上、休んでいません」
コンビニといえば「24時間営業」というイメージが強いが、都心であっても深夜から未明の時間帯は閉店する店が出てきた。
背景には働き手不足がある。店長職を兼務するコンビニオーナーの40代男性に実情を聞いた。AERA 2024年7月29日号より。
白み始めた空にカラスの鳴き声が響く。午前5時。飲み明かしたとみられる若者グループをあちこちで見かける東京・渋谷のセンター街。そのすぐ近くにあるコンビニの店内は真っ暗だった。ガラスドアには「年中無休」「24時間営業」の表示。そのすぐ上に、「営業時間のお知らせ」の貼り紙が掲示されていた。赤字で「7時~23時」と記されている。
24時間営業で集客を見込める都心のコンビニも、深夜から未明の時間帯は閉店するケースが珍しくなくなった。背景要因の一つが働き手不足だ。
「2022年2月に1日、休めたのが最後。もう2年以上、休んでいません」
淡々とした口調でこう打ち明けたのは、都心の別のコンビニの男性オーナーだ。40代。肌つやはいいが、目は少し充血しているように見えた。
5年前に24時間営業をやめた。今の営業時間は午前6時~午後11時。それでもオーナーがほぼ常に店に出ていないとシフトは埋まらない。
店員1人が抜けた今年初めは、1日18時間勤務でカバーしていた時期もあった、と男性は振り返る。
「自宅に戻るのは風呂に入るためだけ。2時間後にはまた店に戻る、という繰り返しでした」 オーナー男性の長時間労働は店長職を兼務していることにも起因する。
コンビニの勤務経験者を派遣する会社を通じ、最低限の人員は雇用できるが、店長を任せられるスキルのある人材の確保は年々厳しくなっている。24時間営業をやめたのは経営効率アップの面が大きい、と男性は明かす。
「コロナ禍以降は特に、深夜の人通りが少なくなりました。深夜の営業をやめれば、その分、来客の多い日中の時間帯に人材を集約できます」
平日の日中はレジが空く隙もないほど、ひっきりなしに客が訪れる。このため、商品を仕入れても陳列に回る店員を確保できない。それで、商品の搬入は深夜の閉店時間帯に行うことにした。その数時間前までは店の奥で仮眠して体力を回復させ、オーナー自らが商品の陳列作業に臨む。
このオーナーを知ったのは、コンビニを評価するネットの投稿欄だった。この店に限らず、ネットにはコンビニ店員の接客態度をなじる投稿であふれている。
たいていは「言われっ放し」だが、このオーナーは違った。店員の態度を詫びつつ、「人手不足のここ数年全く休み無く働いている状況が現状です」(原文ママ)と事情を説明し、客に理解を求める発信をしていたのだ。
取材協力を得るため、筆者は何度もこのコンビニに通い、レジに立つ男性の姿も見てきた。社交的で接客の仕事が好きなのは傍から見ていてもよく分かった。
「なぜもめたのか。次に来店された時には友人になれるよう対応する努力は常に続けています」と話す男性。
ネットに投稿した理由については「店員も長時間勤務でストレスはあると思います。こうした事情はお客さんにも知ってもらいたいと思いました」と吐露した。
ただ、シフトに関しては経営戦略として採用人数をぎりぎりに抑えている面もあるという。スキルの低い店員が多くなれば、人件費が経営を圧迫するからだ。男性は言う。
「私の場合、チェーン本部に働かされている、という感じは全くありません。自分の裁量でやるからにはできる限り効率よく運営したい、という思いだけです」
あまりの長時間勤務を心配する常連客から、「大丈夫なの」「今はまだ若いからいいかもしれないけど……」と声をかけられることもある。男性は苦笑しながらこう話した。
「先のことを考えれば、今の働き方だと続けられなくなるのは分かっているんですけどね。(自分の働き方は)人としておかしいという自覚もあります。でもこのやり方が、自分の生活スタイルになってしまっているんです」