【ストリーミング(ネット配信)不調】米ハリウッドに 「大収縮」
【ストリーミング(ネット配信)不調】米ハリウッドに 「大収縮」
だが、皆の心を悩ませていたのは、業界の存続に関わる脅威、つまり「ハリウッドは縮小しつつある」という懸念だった。
「テレビドラマの黄金期(ピークTV)」は終わった――これが、ロイターの取材に応じたエンターテインメント企業幹部やエージェント、銀行関係者ら17人の結論だ。
オリジナルの連続ドラマや映画は減少し、予算は慎重に精査され、映画館の利益はますます圧迫される中で、テレビ・映画産業では厳しい経済的現実への適応が進んでいる、というのが業界有力者の見立てだ。
「大収縮が迫っている」。あるベテランのテレビ局幹部は、匿名を条件に語った。
「コンテンツの量も製作費も、大幅に削減されることになるのではないか」
この「収縮」説はまもなくはっきりと形を取るだろう。ウォルト・デイズニー、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー、フォックスが2月中に四半期業績を報告するからだ。
こうした状況を背景にメディア企業合併の話も進んでおり、最近ではパラマウント・グローバルのオーナーと、映画「トップガン マーベリック」の共同製作に名を連ねたスカイダンス・メディアのデービッド・エリソン最高経営責任者(CEO)の間で買収交渉が行われた。
投資銀行TDコーエンのアナリストによる試算では、放送・ケーブルテレビ業界の広告収入は2023年末の時点で前年比7%の減少となっており、LSEGによればディズニーの広告収入は総額で11.7%減少している。
ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは2023年1-9月に広告収入が13%減ったと報告している。出版やラジオと同様、既存のテレビ放送でもデジタル広告による空洞化が進んでいる。
2024年も大幅な改善は見込めない。TDコーエンの予想では、放送・ケーブルテレビの広告収入はさらに7%減少する見通しだ。
メディア各社はデジタル広告事業を拡大中だが、コーエン・グループによると、それでも依然として広告収入全体の80%は、衰退する既存テレビ事業が稼いでいるという。
この業界で未来へのけん引役と期待されていたのはストリーミング(ネット配信)サービスだが、何年にもわたって資金を注ぎ込んでみたものの、なかなか収益性は上がらない。
業界が、調査会社モフェットネーサンソンの言う「第3次ストリーミング戦争」に突入した今、競争によって「絶対に持続不可能な」投資があおられる一方で、製作費は2022年の水準を下回るとみられる。
TDコーエンによれば、大半のストリーミングサービスでは値上げの一方で新作コンテンツの配信は減少しており、ストリーミング業界の長期戦略に対する懐疑的な見方が膨らんでいるという。
リアリティー番組ではなく台本のあるシリーズ番組の総本数は、過去最高だった2022年の633本に比べて急減するとみられている。ハリウッドにおけるストライキと支出削減が重なって、昨年の制作本数は落ち込んだ。
市場調査企業アンペアアナリシスのデータによると、2023年に米国で公開されたシリーズは481本にとどまった。
アンペアによると、市場首位のネットフリックスでさえ、台本のあるシリーズ番組の配信本数は2022年から2023年にかけて3分の1以上も減少した。
ネットフリックスは第4・四半期に新規加入件数が過去最高となり、ストリーミングサービスとしては高い収益性を誇る。同社にコメントを要請したが回答は得られなかった。
ロイターの取材に応じた業界幹部らは、今後数年のうちにストリーミングサービスでの制作本数はさらに減少し、300本台になる可能性があると語った。
https://jp.reuters.com/economy/industry/TAEKTD5ZFNL4JORC3JYZBVT5WQ-2024-02-11/