【ロシア軍の車両不足がますます深刻化】70年前の軽装甲車両で無謀な突撃
【ロシア軍の車両不足がますます深刻化】70年前の軽装甲車両で無謀な突撃
最もひどくはないと言えるのは、たとえばゴルフカートのような前後左右吹き抜けの中国製の新しい車両よりは、たとえ厚さ10mmでも装甲のある車両に乗り込んで移動するほうが、ロシア兵にとってまだ安全だろうからだ。
とはいえ、ロシアのウクライナに対する全面戦争が2年4カ月目に入ろうとするなか、ウクライナ東部の戦場でBTR-50の出番が増えているというのは、やはりロシア側にとって不吉なことである。
ウクライナの調査分析グループであるフロンテリジェンス・インサイトは「戦車のような相応の戦闘車両を完全に装備する機械化部隊がなければ、防御を迅速かつ決定的に突破することは非常に難しいだろう」と解説している。
そのうえで「ロシア側はこうした制約があるために、前進は遅く限定的なものになり、全体の進捗も妨げられる公算が大きい」と予想している。
BTR-50はディーゼルエンジンを搭載し、無限軌道(キャタピラ)を履いた重量14.5tほどの装甲車両で、乗員2人のほか、兵員最大20人が乗り込める。通常、重機関銃を装備する。
BTR-50は1950年代初めにソ連で開発され、1954年に就役してから12年にわたってソ連軍の主力戦闘車両だった。
乗員はBTR-50で歩兵部隊などを戦場に運び、防護しながら下車させ、その後兵士たちを機関銃で支援した。
ただ、BTR-50は1960年代の基準ですら軽武装で軽装甲だった。そのため、より重く、より重武装のBMP-1歩兵戦闘車が1966年に導入され、数千両のBTR-50は第二線の部隊に回された。
これらのBTR-50は砲兵や工兵、対空砲などを運ぶのに使われたが、その役割ものちにMT-LB装甲牽引車が担うようになった。
ロシアはやむを得ず、2023年初め、屋外で保管していたBTR-50を再利用し始めた。
ロシア軍の指揮官たちも、さすがに当初はBTR-50を前線には投入せず、後方の支援任務に振り向けていた。しかし2023年末になると、BTR-50はウクライナ東部の突撃部隊の間に姿を見せ始めた。
それから半年の間に、ロシア軍はBTR-50を少なくとも5両戦闘で失ったことが、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト
「オリックス(Oryx)」のアナリストによって確認されている。うち1両は19日かその少し前、ドネツク州ノボミハイリウカの西にあるウクライナ側の防御線を攻撃した際、ジャベリン対戦車ミサイルの直撃を受けた。
この方面の防御線を維持する第79独立空中強襲旅団の対戦車ミサイル兵は、血に飢えていることで有名だ。第79旅団に対しては、厚さ数百mmの装甲を備えるT-72戦車を送り込むのでさえ危険だろう。まして、わずか10mmという薄い装甲のBTR-50を送り込むのは自殺も同然だ。
BTR-50による破滅的な突撃は、ロシア軍の抱えるより広範な問題を浮き彫りにしている。
ウクライナには、米国と欧州から数百億ドル規模の新たな軍事援助の一部が届き始めている。
ロシア側はこうした援助が到着する前に少しでも多くウクライナの領土を奪うつもりだったのか、2週間ほど前、ウクライナ北東部の国境を越えて南進し、新たな攻勢に乗り出した。
ロシアとの国境から40kmしか離れていないウクライナ第2の都市、ハルキウを最終目標に据えている可能性もあるこの攻勢で、ロシア軍は当初、国境沿いでいくつかの村を一気に制圧した。しかしその後、米国から届いた新たな砲弾を発射するウクライナ軍の機械化旅団の壁に阻まれた。
ロシア軍がウクライナ南部での陣地戦と並行して、東部と北東部で攻勢を継続するのは困難だということが明らかになった。
フロンテリジェンス・インサイトによれば、北東部でロシア軍が大きな前進を遂げるには「大量の車両」が必要になる。だが、ロシアは毎月数万人の新兵を動員しているものの、これらの兵士に十分な近代的な車両をあてがうことはできていない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3bc87cd1403e4b9ad8c7b930f7a172ae1e72abf3?page=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/3bc87cd1403e4b9ad8c7b930f7a172ae1e72abf3?page=2